ここ 20 年間,低迷してきた日本が,東日本大震災によってさらに没落することが心配されている一方で,これをきっかけに東北だけでなく日本全体が復活するという意見もある. レベッカ・ソルニットの 「災害ユートピア」 という本には,災害をきっかけとしておおきな変化をおこした例がとりあげられている. 現在の日本とはまったく状況がちがっているが,勇気づけるためのひとつの材料にはなるだろう.
1972 年にニカラグアでおこった地震は為政者への不信をたかめ,1979 年のサンディニスタ革命につながったという. 革命政府はおおくの偉業をなしとげたが,社会主義政権だったためにレーガン政権によってつぶされ,国民はふたたび圧政のもとにおかれるようになったという.
チェルノブイリ原発事故もその 5 年後のソ連崩壊の真の原因だったと,当時のソ連大統領ゴルバチョフがいったという.
こうした例をあげて著者は.災害と革命という 「2 つの現象は,人々の団結,不確実性,新たな可能性のほかに,物事を支配している通常のシステムが転覆し,それまでのルールが壊れて多くの扉がひらくといった側面を共有している」 と書いている. 幸か不幸か日本では革命がおこることはないだろうが,政府・自治体も民間も,これまでにない事態に直面して,これまでの制度や限界をやぶらざるをえない状態になっている. 革命にくらべればゆるやかな変化ではあっても,これまでとくらべればはるかにおおきな変化をもたらすだろう. だから,そこに日本の復活・復興を期待してもよいだろう.