東日本大震災の被災地でとってきた写真のなかには,そのときの雰囲気をつたえているものも,もちろんある. しかし,写真にうつしたかったものがほとんど表現できていない写真もある. フレームのなかだけをうつすという写真の特性からして,どうしようもなかったものもあるとおもう. しかし,3D の写真であれば,もっとうまく表現できたものもあったとおもう.
仙台塩釜港のちかくでとったこの 2 枚の写真は,道路の 「壁」 をうつしたものだ. この壁は湾曲している. それは震災後 "つくられた" 道がここで湾曲していることに対応している. だからこそ,これが 「壁」 にみえるわけだ. たぶん,くるまを通行可能にするために,瓦礫となったくるまを重機でおしつぶして,この壁をつくったのだろう.
ところが,この写真では湾曲していることがわからない. 道路の 「壁」 になっていることを表現するためには,もうすこしひろい範囲をうつす必要があったかもしれないが,そうすると,ますます湾曲していることがわかりにくくなるとおもって,このような構図にした. しかし,それでもうまくいかなかった.
3D カメラでもうすこしひろい範囲をうつせば,あるいはうまく表現できたかもしれない. ただ,そうすると,そこに立ったときに感じていた壁の圧迫感が,この写真以上にうしなわれてしまうだろうが.