戦前の日本の体制をファシズムときめてかかっている議論がいまだに,あまりにめだつ. しかし,日本の体制がファシズムだったということは全然あきらかなことではないのだ. 日本がドイツ,イタリアと三国同盟をむすんでいたことが,こういう短絡的なかんがえかたを生む背景にあるのだろう. しかし,すくなくとも,それがファシズムではなかったとかんがえているひとに配慮した議論をしてもらいたいものだ.
かつてファシズムに占拠されていた国は,その名の由来であるファシスト党がありムソリーニが独裁したイタリアと,ヒトラー独裁のもとのドイツだ. これらの体制にはファシズムの特徴が典型的にあらわれている.
それに対して日本にはムソリーニやヒトラーのようなカリスマをもった独裁者はいなかった. 昭和天皇や東条英機をかれらに対応させる説もあるが,すくなくとも,あきらかな対応関係はなりたたない.
そのため,伊独と差をつけて 「天皇制ファシズム」 ということばがつかわれたりする. しかし,それがほんとうにファシズムだったのかどうかは,すくなくとも議論の余地があることなのだ. 定説があるとはとてもいえない状態で,当時の日本の体制をファシズムときめつける議論はやめてもらいたいものだ.
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