序章において著者は中国の台頭や中東での民主化運動にふれ,西洋文明が限界点に到達しているのではないかとのべている. そこで著者がたよりにしているなかにはヨーロッパの思想家もいるが,この本でおもに引用されているのは森信三と安岡正篤だ. この 2 人がいま引用するに値するのかどうか,よくわからない. しかし,ウィキリークスをデジタル情報革命の弊害といってかたづけたり,人々や社会はどんどん無力化し堕落しはじめているというような現代社会に対する偏見にこれらの思想家のかんがえをむすびつけてみても,著者がめざす 「21 世紀の近未来を洞察する」 ことにはつながらないだろう. 森や安岡の引用が登場しない最終章がたぶん著者の得意分野である現代日本における「国を開く」施策についての章であり,ここだけは読むに値する. それ以前の章は論理の破綻した,たわごとといってよいだろう.
評価: ★☆☆☆☆
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