「スローネット」 とはなんなのか? 「スロー IT」 ということばも登場するが,それはなんなのか? この本の最後まで,それらはわからないままだ. ポール・ヴィリリオの 「声」 が紹介されてそこにちかづくが,到達しないまま,またはなれていってしまう. iPad も登場するが,スローネットとの関係はよくわからないままだ. 「フロンティア精神」 も議論に登場するが,「欲にかられた連中による」 ものとして,不当におとしめられておわるだけだ. ウィーナーのサイバネティクスも登場させられるが,それを継承するものとして 2 次サイバネティクスとか,基礎情報学とかいうマイナーな理論が登場して,議論はしりすぼみになってしまう. 世界を席巻するグローバリゼーションに対して,著者はローカリズムを 「礼賛」 する. しかし,そのなかで 「社内英語公用語化」 を誤りときめつける論理は破綻しているし,グローバリゼーションに対抗できる武器はあたえられていない.
著者はほかにもいろいろ書いているが,このあたりでやめよう. ともかく,この本は 「スローネット」 なるもののそばをぐるぐるまわりながら,なにひとつ意味のある議論をしていない.
評価: ★☆☆☆☆
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