ARPA ネット創設にかかわったリックライダー,サザランド,テイラー,ロバーツといったひとたちがそれぞれどういうかんがえをもち,どのように共感し,どのようにたがいにずれていたかをえがいている. うきぼりにされる対立点としては第 1 に大型コンピュータの共同利用をめざしたのか,占有された小型コンピュータのネットワーキングをめざしたのかということがある. リックライダーは前者をめざした点で時代のながれからややとりのこされていたというように,この本からは読める.
この本はもとは著者の博士論文だったという. 博士論文としてこれだけの論を展開できるのはすばらしい. だが,現在インターネットがメイルで代表される双方向のコミュニケーションと,Web という (ある程度の双方向性はあるとしても) 一方向的なコミュニケーションの両方につかわれていることをかんがえても,リックライダーのかんがえがふるいものだとはいえないだろう. それから,この本では思想的に Web につながっているとかんがえられる,つまりリックライダーのかんがえとつながりがあるとかんがえられる Memex や Xanadu についてはふれていない. そこにものたりなさを感じる.
評価: ★★★☆☆
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