「上から目線」 ということばは比較的最近つかわれるようになった. だから,それは最近の社会の変化を反映しているだろう. 著者はこのことばがつかわれるようになった社会の変化を分析する. しかし,あまりにいろいろな変化を 「上から目線」 とむすびつけてしまっているようにみえる.
たぶん,この本のなかでは 「上から目線」 より対話の 「テンプレート」 がつかえなくなったという,何回か登場する指摘のほうが重要なのだろう. 著者によれば,日本語には 「上下関係を規定する性質がある」 という. ここで著者はテンプレートということばをつかってはいないが,これもそれにちかいのだろう.
こういうテンプレートがつかえなくなった (あるいは不適当なテンプレートがつかわれている) ことによって,コミュニケーションがうまくいかなくなっている. それがうまくいかなくなっていることに問題があるのだから,第 8 章で著者がその処方箋をしめしているのは妥当なことだろうが,その処方箋は特殊なばあいにしかつかえないし,ピンとこない. つまり著者は処方箋をしめすのに失敗しているといえるだろう. しかし,テンプレートや上下関係の規定に関する指摘じたいは重要だとおもう.
評価: ★★★☆☆
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