「自由と民主主義をやめる」 という過激なタイトルは 「民主主義」 を卒業するという意味に読める. もしそうであるならば,まず民主主義を理解したうえでなければならないだろう. 民主主義においては最終的には多数決でものごとがきめられるが,その過程では議論が重視され,少数意見を尊重するべきだとされている. しかし,著者はそのことにはふれずに,民主主義では多数の横暴がおこなわれるように書いている. それは 「民主主義国」 において実際におこることだが,理念としての民主主義からははずれている. 著者はそういう民主主義の理念にはふれないまま,議論をすすめていく.
著者は対立する思想として 「左翼」 と 「保守」 をとりあげ,(著者のことばとはちがうが)「左翼」 を理想主義的なもの,「保守」 を現実主義的なものとしている. とすると,上記のような理念を重視するかんがえは 「左翼」 のものであり,著者のような 「保守」 はそれと対立するということになるのだろう. 一応すじはとおっているし現実主義に価値があるのはもちろんだが,民主主義の理想をすてるべき理由はわからない. また,著者は左翼の思想をつきつめるとニヒリズムにいたるという主張をしているが,これも理解することができない.
評価: ★★☆☆☆
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