東日本大震災後によくみられたという欺瞞的な話法を 「東大話法」 と呼んでいるが,それは東大がうみだしたわけではない. また,議論のすすめかたに弱点があるのはむしろふつうのことであり,あげられている例には,著者がはげしく糾弾しているほどにおおきな問題があるともおもえない.
著者はその話法の原因を 「立場主義」 というナイーブなことばで説明しようとしている. しかし,それは実は官僚制の問題なのではないか. 立場というよりは権限がかぎられているためにそれを越境する発言ができない. 官僚においては典型的だし,そのなかに東大卒が多いのもたしかだが,だからといって 「東大話法」 などといわれるのは,無関係な東大 OB には迷惑な話だ.
著者は企業の例もあげているが,企業組織は官僚制よりはゆるいとはいうものの,やはり権限がないところにはふみこめない. 著者は企業につとめていたことがあるというが,すぐにやめているから,適切な例をあげることはできないのではないだろうか?
単なるおもいつきの議論でなく,きちんと組織論などを理解して議論してもらいたいものだ. もちろん,それを理解したうえでそこが問題でぶっこわすべきだというなら,それはきくべき意見になるだろう.
評価: ★☆☆☆☆
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