Printrbot+ のくみたてでさんざん苦労してきた. その結果みえてきた個人向け 3D プリンタの課題をあげる.
3D プリンタを買うひとは,3D 印刷そのものに関する技術はもっていることが期待される. しかし,3D プリンタのくみたてや調整に関してはほとんど知らないことを仮定するべきだろう. サポートがしっかりした 3D プリンタをつかうよりはくみたてや調整に関する知識がなくてはすまないだろうが,それについてのあらゆる知識をもっていることを仮定したら,たいていは失敗におわるだろう.
Printrbot+ はくみたての仮定で選択したり調整したりする項目があまりに多い. しかも,なにをどう選択したり調整したりすればよいかが,くみたてマニュアルなどに書いてない. わからないときは Web をしらべまわり,それでもわからないことが多いので試行錯誤する必要があった. そこまでうまくやれるひとは,アマチュアのなかにはそんなに多くはないだろう.
だから,選択の余地がすくない設計,調整の必要がない設計が必要だ. たとえば,2 個の部品をくみあわせるときは,向きを選択しなければならないようなことはなくす必要がある. たとえば,ボードにコネクタをはめるときは,逆にははまらないようにしておく必要がある. コネクタに関しては Printrbot でもそのようになっているが,すべてのくみたてステップでそれが実現されるように設計する必要がある.
3D プリンタでは x, y, z 軸方向の移動にそれぞれモータを使用するが,できればそれらのコネクタはちがっているほうがよい. そうすれば,まちがえることはない. しかし,汎用部品をつかっているのだから,ことなるコネクタを使用するのはむずかしい. ならば,まちがえないようにコネクタに識別子をつけておけばよい. たとえば,色がちがっていればまちがえることはほとんどないだろう.
Printrbot+ で調整が必要になるおおきな原因は精度がわるいことだ. 3D 印刷されたギアの精度がわるく,またそれをとりつける板のカッティング精度がわるい (真円でないなど) ためにその位置を調整する必要が生じている. 精度がよければ,きまった位置にとりつけるだけでよいはずだ. しかし,コストをあげずに精度をあげるのはむずかしい. 3D 印刷やレーザ・カッティングより精度のよい方法をつかうには,工作機械にカネをかける必要がある. それを低コストで実現することがチャレンジになるだろう.
上記のような点において Printrbot+ の設計は最悪にちかいが,他のキットはどうだろう. Printrbot+ よりくみたてがかんたんなものはあるだろうが,まだ改良の余地はあり,コスト低下の余地もあるのではないだろうか. 3D プリンタのキットはすでに多数ある. しかし,そのおおくは英米でデザインされていることもあって,ISO 標準の部品をつかっていないこともひとつの問題だ. これらの問題が解決されたキットをつくれば,まだこの市場に参入して世界に売るチャンスは十分あるのではないだろうか.