富士山が世界遺産に登録された. 三保の松原をのぞくべきだという勧告をくつがえして,それをふくめた世界遺産登録を実現した立役者は文化庁長官の 近藤 誠一 氏 (写真は文化庁のサイトからの引用) だという. NHK の 「ニュース深読み」 ではその交渉力を評価していたが,もっと重要なのは世界に訴求できるビジョンだとおもう.
三保の松原をふくむ世界遺産登録のために,外交経験がふかい近藤長官は反対派の 4 カ国を中心に会議前に交渉したという. NHK ではそれをとりあげていたわけだが,反対派も納得させられる論理,さらにはそれをささえるビジョンがあったから交渉に成功したのだとかんがえられる.
NHK の取材に対して近藤長官は,(記憶にたよって書いているので正確でないとはおもうが) 世界遺産をきめるときにユネスコではこれまで見られるもの,さわれるものが重視されてきたが,アジアの文化において重要なのは精神的なものだということを主張したのだといっていた. ユネスコが世界遺産をきめるときに,アジアにおいてはそういう精神性を重視する必要があるという主張だろう.
略歴によれば,近藤氏は外務省に入省して外交官としてのキャリアをつんできたが,2006 年からはユネスコ関連の仕事をしてきたようだ. そのなかで,世界の文化や世界遺産に関するビジョンを確立してきたのだろう. そういう西洋と東洋の文化のちがいに根ざしたビジョンがまずあったから,説得力のある交渉が可能になったのだとかんがえられる.
2013-8-22 追記:
いまごろになって朝日新聞に近藤氏へのインタビュー記事が 15 面の大半をつかって掲載された
(8/22 朝刊).
そこには,ユネスコでの人間関係をつみあげてきたこと,政治力をつかわずに正攻法でいった理由などが書かれている.
NHK のみじかいニュースでもった印象にまちがいはなかったとおもうが,それがもっとはっきりと書かれている.