世界の FabLab からひとがあつまって,日本で Fab 9 という会議がおこなわれている. この会議は基本的に closed だが,8 月 26 日には一般向けの FabLab シンポジウムがおこなわれた. それを聴講してきたので,かんたんにその感想をかいておく.
FabLab シンポジウムの参加費は 1 万円だ. 神奈川芸術劇場というかなり大規模な施設をつかっての開催ではあるが,それにしてもたかい. 最上階をのぞけばほぼ席がうまるだけの参加者があつまっていた. 学生は 5000 円で参加できるというのだが,それでもたかいからか,学生はすくなかったようにおもう.
日本の FabLab のしかけ人は慶応 SFC の 田中 浩也 准教授であり,シンポジウムでも中心的なやくわりをはたしていた. これを期にインターネットの興隆につぐおおきなうごきをおこしたいということだが,はたしてどうなるだろうか? すくなくともシンポジウムからは,まだ世界の FabLab のネットワークがそれほどおおきなうごきやエネルギーをうみだしているようにはみえなかった.
「デジタル・ファブリケーション」 とくに 3D プリンタの普及や利用がおおきな話題になっていることはたしかだが,コンピュータの歴史などをひきあいにだして,「デジタル」 を強調するのが適切なのかどうか,疑問を感じる. コンピュータがつくるヴァーチャルな世界とはちがって,ものづくりはリアルなものであり,アナログでありつづけるだろう. コンピュータによってヴァーチャルでデジタルにひっぱられた世界が,もう一度リアルでアナログな世界を回復することにこそ価値があるようにおもえる. 物体を走査線にわけるような現在の 3D プリンタが現在のままでよいかどうかについても,同様に疑問を感じる. これからおころうとしていることは,もっとべつのことなのではないだろうか. そして,それはまだはじまっていないのではないだろうか.