「はだしのゲン」 というマンガが松江市教育委員会によって閲覧制限されていたのが撤回された. 教育委員会が介入するのは不適切であり,制限が撤回されたことは適切だとかんがえられる. しかし,このマンガにある残虐性よりも,その残虐な場面にある自虐性のほうが問題だとおもえる.
このマンガには日本兵が中国でおこなったという残虐行為がえがかれている. 戦争には残虐な行為はつきものであり,日本軍もそういう行為にかかわったことにまちがいはないだろう. しかし,一般市民の首をはねたり,性的な残虐行為によって女性を殺したりという行為をおおくの日本人がしたとはかんがえにくい. 日中戦争におけるこういう行為が強調されたのはまさに 「はだしのゲン」 が書かれた 80 年代であり,それは中国のプロパガンダによって日本人もそういう行為が実際以上に戦時中におこなわれたと信じたからだろう. このマンガがそういう背景のもとで書かれたことはまちがいないようにおもわれる.
当時日本人が中国や朝鮮においておこなったとされた行為に関しては,その後,根拠がないことがわかったり,証拠とされていた写真などが日本人が関与したものでないことがわかったりしている. それをかんがえると,こういう自虐的な内容を,すくなくともそれが書かれている部分をこどもにみせるのは誤解をあたえる適切でない行為だとかんがえられる. みせるべきかどうかを判断するべきなのは教育委員会ではなく教師や親であるべきだろうが,私はそうおもう.
追記:
上記の感想は 「はだしのゲン」 を本で読んだ結果ではなくて,朝日新聞の記事をみて感じたものだ.
ネットで検索してみたかぎりでは朝日新聞に掲載された部分はみつからない.
だから,それだけみて 「はだしのゲン」 全体を評価するのは適切でない.
上記の感想はあくまでもその特定の部分に関するものだ.