Generative art を生成するためのツールとしてよくつかわれているのが Processing だ. Java をつかって実装され,かんたんに図形や曲線をえがくことができる. しかし,Processing にはいくつか弱点がある. Processing に似た言語として PostScript があるが,弱点はほぼ共通している.
PostScript はページ・プリンタ (レーザ・プリンタ) のための言語だ. 印刷するべきラスター・データを生成する. PostScript によって図形をえがいても,それはラスター・データとして存在するのであり,オブジェクトではない. だから,かいたあとで図形だけを平行移動したり回転させたりすることはできない.
この点は Processing でもおなじだ. 生成された図形を移動・回転させることはできない. これが第 1 の弱点だ. キャンバスからはみだしてしまった部分はかくれているのではなくて,もはや存在しない. したがって,移動させてその部分をみるというようなことはできない. 平行移動や回転ができれば,どれだけ便利だろうとおもう.
図形をえがくソフトウェアとして,CAD ツールがある. CAD ツールにおいてはえがかれた図形はオブジェクトなので,自由に平行移動したり回転したりすることができる. この点で Processing よりははるかに便利だ.
たいていの CAD ツールは高価だが,なかには無償で利用できるものもある. OpenSCAD はアルゴリズム的に図形を生成して表示させることができる点で便利だ. ただし,generative art を生成するときには,Processing ほど自由度はたかくない.
そして,第 2 の弱点は 3D 図形をえがく機能がよわいことだ. Processing でも直方体や球をえがくくらいのことはできるが,機能はかぎられていて,便利ではない. この点で,当然のことながら 3D CAD ツールはさまざまな方法で 3D 図形をえがくことができて便利だ. ただし,3D CAD ツールのおおくは 3 次元空間内に自由に曲線をえがくことはできないので,Processing をつかって 2 次元空間でできることを 3 次元に拡張しようとしても,それは容易にはできない. 3D CAD ツールは generative art のためのツールではない.
そういうわけで,今後必要とされるであろう 3D プリンタのための generative art ツールとしてつかうのに適当なツールはまだないといえるだろう.