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数学・計算・情報学・プログラミング:人工知能・複雑系と人工生命

IWNC 2014 での発表と聴講

会社でやすみをとって 8th International Workshop on Natural Computation (IWNC 2014) という国際学会で 「ゆらぎ印刷」 の発表をしてきた. 国際学会のはずだが,外国人としては日本語がわかるひとりしかいないため,すべてが日本語で おこなわれた. もうしこまれた発表はすべてうけつけるということなので,玉石混淆なのだろうとおもったが, 「全国大会」などでよくあるおかしな発表はひとつもなく,ひごろ参加しているネットワークの 学会よりはずっとおもしろかった.

発表したのは 「ゆらぎ印刷」 つまり 3D プリンタをつかってランダムさをふくんだ自己組織的なパターンを印刷する件だ (FDM 3D-printing as Asynchronous Cellular Automata). ストライプ状のパターンが一番よくあらわれるが,ストライプが途中できえるパターン,ストライプが分岐したりマージしたりするパターン,波がストライプをよこぎるパターン,メッシュ状のパターンなどがえられている. その例をみせるとともに,それをセル・オートマトンにもとづいてシミュレートした結果をしめした. しかし,興味はもってもらったとはいえ,かならずしも十分なフィードバックがえられたとはいえない. 予想どおり,参加者のなかには物理学系のひとがおおかったし,それを予想してコメントがもらえないかとおもってやった発表なのだが,おもったようにはいかなかったようだ. そういうひとに十分に理解してもらえる発表ではなかったということかもしれない.

この発表に関してはセル・オートマトンにもとづくモデルに関して議論してもらえればとかんがえていたが,むしろ質疑ではアートへの応用とか,ひとにつかってもらうにはツールが必要で,それをつくりたいとかんがえているというような話に発展していった. 個人的にやろうとしている以上,ビジネスにむすびついていかなければいきのこれないから,これは意図とはちがっていたが順当な議論だったとおもう.

ここからまなんでつぎの発表につなげようとかんがえていたが,その意図は十分にはかなえられなかった. しかし,つぎのチャンスをいかして,今度はもっと有用なフィードバックをもらえるようにしたい.

セル・オートマトンに関係する発表はほかにもあり,複雑なパターンをシミュレートしようとしている点では似ている点も あったが,直接的な関係はみいだせなかった.

それよりおもしろかったのは,Masataka Iinuma による "Measurements of negative joint probabilities in optical quantum system" という発表だ. 量子力学的な実験で不確定性の関係にある 2 つの量をはかるのに,これまではそれらを逐次的にはかろうとしてうまくいかなったのを,初段であいまいさをのこせば 2 段めで有意な結果をえることができるという. (こんなみじかい表現ではうまく理解されないだろうが.) もっとおもしろいのは,その実験を解釈するのに量子力学をつかわず,確率として負の値をみとめるとうまく解釈できるということだ.

2 日めでもっともおもしろかったのは Yasuhiro Suzuki と Fuminori Akiba による 「触譜」 に関する 2 件の発表だ. マッサージのやりかたをひとにつたえるには,これまではやってみせる以外に有効な方法が なかったが,その場所や使用する手の場所,つよさなどを 5 線譜として記述する方法を確立した結果, それを比較的容易につたえることができるようになったのだという. さらに,触譜はパフォーマンスやその他いろいろなところに応用できるという. 触譜というあたらしいメディアができたためにいろいろなことが可能になったという説明だが,もっと重要なことは 触譜によってこれまで記号化されていなかった行為が記号化されたことにあるのだとおもう. これは言語の発生に匹敵することなのではないだろうか.

ほかにもおもしろい発表があったが,ここでは省略する.

初日の夜には workshop dinner があったが,ここでもいろいろおもしろい話をきくことができた. 小保方さんの話もでたが,小保方さんには同情的な発言がおおくて,理研や学位をあたえた研究室にはきびしかった.

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