「3D Printing」 という展示会がはじめて東京ビッグサイトででひらかれた. nanotech 2015 の会場の一部だけが 3D printing にわりあてられている. 確保されたスペースのうち一部はうまらず,日本ではまだまだだと感じさせたが,収穫もあった.
3D printing のコーナーの展示のほとんどは 3D プリンタとそれで印刷したものだ. プリンタそのものもだが,さまざまな印刷物をみることができたのも収穫だった. 3D プリンタのおおくは FDM 型つまりとかしたプラスティックをつかうタイプだ. その印刷品質はかならずしもよいとはいえない. いろいろ FDM 型プリンタの弱点がみえてくる.
自宅にも 3D プリンタがあって,よくつかっている. そして,いろいろな問題点になやまされている. それが自分のプリンタに固有のものなのか,他のプリンタにも共通するものなのか,わからないままだった. しかし,きょうみたかぎりでは,そのおおくが他のプリンタにも共通の問題点であることがわかった.
最初に気づいたのは,底面がきたない印刷物が多いということだ. PLA フィラメントをつかうとき,紙をはったうえに印刷することがおおいが,そのために紙の表面の凹凸やつぎめ,しわのようなものが印刷物の底面にうつしとられる. しばらくつかっていると紙が部分的にはがれてくるが,それも印刷物にうつしとられる. だから底面はきたなくなる.
MakerBot のブース (親会社である Stratasys のブースの大半をしめている) でも紙がはがれているのがみえたので,もっとよい方法はないのかと質問してみたが,いまのところはこれしかないというのがこたえだった. 他の会社にきくと,紙をはらない場合はホットエンド (ノズル) とベッドとのあいだのすきまを正確に調整することが必要だというこたえがかえってきた. きれいに紙をはるのはめんどうな作業だが,紙をつかわないとそれよりもっとてまがかかるということだ.
第 2 の弱点は印刷物にこわれた部分があるものがおおいということだ. フィラメントどうしがきっちりくっついていないのでそれらがバラバラになったり,ほそい線とくに縦方向の線が途中できれたりしている. たての線がきれるのは,精度がわるくてきれやすいこともあるが,そもそもちいさくてうすい層をかさねてつくる点に弱点がある. 弱点がわかるのはよいが,展示会でこんなこわれたものを平気でみせている神経をうたがう.
第 3 の弱点は層間のつなぎだ. 通常の 3D 印刷の方法ではひとつの層の印刷がおわったあとでつぎの層の印刷にうつるが,その際にちょっとした欠陥ができる. 層間の移動がいつもおなじ場所でおこると,たてにすじがはいってしまう. このすじがはっきりみえている印刷物がけっこうある.
ほかにも,印刷物をみると,設計したわけではないもようがついていたり,ストライプができていたり,いろいろ興味ぶかく,うなずける点がみられる. これらをみることができただけでも収穫があったといえる.