駒場にある東大生産技術研究所でひらかれた第 5 回 Additive Manufacturing シンポジウムをききにいった. 1 月 22 〜 23 日の 2 日間ひらかれたが,私は 2 日めだけ行った. テキサス大オースティン校の D. L. Bourell 教授の招待講演がめだまだが,ほかの講演でもいろいろ,えるところがあった.
Bourell 教授の話は 3D 印刷の現在,過去,未来についてのものだ. これにちかい話を北京でもきいたようにおもう. 現在としては米国出願特許数やさまざまな応用などの話があった. 過去としても特許の話があり,1981 年に東大の児玉教授の特許などが紹介された. 近未来の話として,もうすぐ販売されるという HP の Multi Jet Fusion (TM) や,すでに販売されている砂糖やチョコレートのプリンタがとりあげられた. もうすこしさきのこととしては,あとで くいんと という会社の石井氏がとりあげるトポロジー最適化などがとりあげられていた. さらに遠未来のこととして生体組織の印刷などがとりあげられた.
すでにこれにちかい話をきいているので,それほどあたらしい発見はなかった. しかし,Weibull Modulus などのキーワードがひっかかった.
石川県工業試験場と大阪府産技研のひとの講演がそれぞれあり,地域の企業との共同プロジェクトが紹介された. 後者の発表のなかでは大阪の企業などからうけた質問に関する統計も紹介された. 私は東京都の同様の質問窓口にきこうとして,うまくいかなかったのだが,ほかの質問にはうまくこたえられているのだろうか. こたえてもらえなかったのは FDM で印刷した中空球の断面観察・計測に関するものだが,どういう方法に関する質問なのかをいわないと (つまり私自身がだいたいのこたえをいわないと) 担当者がわからないというので,うまくいかなかった. これについてはきょう,このあとの発表者であるアスペクトのひとにききにいって,一応のこたえをえることができた.
そのアスペクトの萩原氏は真空中での印刷についての話をしていたが,その話のなかで印刷した金属の断面写真をみせていた. 私のは樹脂だが,それをみて質問しにいった. 写真をとったのは産総研のひとだということで,産総研のひとを紹介してくれた. そのひとと話していて,断面写真はそうかんたんにはとれないが,カッターなどで切断してから断面を研磨してとるのだとおしえてもらった.
Selective Laser Sintering (SLS) は代表的な 3D 印刷の方法だが,最近,産業界ではこのことばにかわって PBF (powder bed fusion) ということばがつかわれているということで,PBF に関する発表が 3 件ほどあった. 大阪府産技研の中本氏は金属の PBF,アルケマの井上氏によるポリアミド (ナイロン) の PBF などだ. 井上氏は,ポリアミドを結晶する温度と融解する温度 (数度から 30 度くらい差がある) のあいだにたもつ (そのために加温する) ことが,材料の収縮を防止し,そりを防止するのに重要だといっていた. PBF だけでなく FDM でもできるだけこのあいだの温度にすることが重要なのだろう.
くいんと の石井氏はトポロジー最適化 (できるだけすくない材料で必要な強度をえる) と形状最適化 (表面積をへらすなど) の話をした. 1989 年からトポロジー最適化をビジネスにしてきて,Springer のトポロジー最適化の本にも社名がでているのだという. しかし,最適化でえられた形状がなかなかつくれなかったが,最近になって 3D 印刷でできるようになったのだという.
このシンポジウムを企画しているのは東大生研の新野教授だが,彼も,また発表と展示をしているアスペクトという会社の社長の早野氏 (ことしはきていなかったようだ) も,最後に講演した芝浦工大の安斎教授も,理研の出身なのだという. 石井氏もその時代に彼らにかかわっていたようだ. 日本の 3D 印刷関係者 (研究者) のつながりがすこしみえたようにおもう.
なお,生研の山中研究室を中心とする展示が会場のちかくであり,私もそれをみてきた. 3D 印刷だけの展示ではないが,それが中心だ. さまざまな材料で 3D 印刷されたものの美や感性的な面を追求している. 私がやりたいことにも通じているとおもう.