ICOIN 2015 という学会で 2 件の発表をするために,カンボジアのシェムリアップ (Siem Reap) にいった. アンコール・ワットをはじめとする遺跡たちは,廃墟の雰囲気をただよわせている. これらの遺跡は 20 世紀にながくつづいた戦争によって破壊されたが,廃墟となった原因はむしろそれ以前にある.
通常,遺跡というとほとんど原型をとどめていないか,または完全に復元されていて,どちらの場合も廃墟にはみえない. しかし,アンコール遺跡のおおくは部分的に復元され,あとはこわれたままになっている. それが廃墟を感じさせる.
たとえば,アンコール・ワットの北東にあるタ・プロムという寺は 17 世紀に放棄されたのだという. その後,建物や壁はこわれ,そこには木がまとわりついた. いまではその木は巨木になって,ふしぎな光景をつくりだしている.
寺の内外にはおおくの仏像やひとの像があるが,それらのおおくは頭がない. 自然にこわれたものもあるだろうが,偶像をきらう者によってこわされたものが多いのではないだろうか.
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