あれこれ論文を書いていると,査読をたのまれることもときどきある. 最近はコンピュータ / ネットワーク関係だけでなく 3D 印刷の論文を査読することもある. コンピュータ関係といってもよく知らない世界が多いし,3D 印刷となると材料のことを知る必要があるので,なかなかたいへんだ.
最近,査読した論文のなかで一番時間をとれらたのはソフトウェア工学の論文だ. 国際学会の論文査読をとびこみでたのまれた. 「まあいいだろう」とおもってひきうけたのが,まちがいだった. もともとソフトウェア工学は専門にちかいといってもよいが,あまりふかくかかわったことがなかった. 論文アブストラクトのなかに SEI (Software Engineering Institute) ということばがでてきたので,CMU (Carnegie Mellon University) にいたころをおもいだしてなつかしくなったのが,うっかりひきうけてしまったひとつの原因だ.
しかし,デザイン・パターンをかじったことはあっても,実際にそれをいかしてソフトウェア開発をしたことはない. ソフトウェア・アーキテクトという仕事があることは知っていても,自分はもちろんそうではないし,ソフトウェア・アーキテクトの知りあいがいるわけでもない. それなのに,それらの概念に密にかかわる論文の査読をひきうけてしまった. いい機会だとおもって,査読対象の論文で引用している文献などをしらべて,これまで断片的にしか理解していなかったソフトウェア工学の概念をつなぎあわせた. そしてようやく全体像を把握して,なんとか査読することができた.
3D 印刷の論文査読はソフトウェア関係のところからもくるが,きょうようやくおわらせたのは,SFF (Solid Free-form Fabrication Symposium) の 2 件の論文だ. この学会では採択した論文を査読してもらってもいいし,査読なしでもいいという (ふしぎな) ことになっている. せっかく投稿するなら査読してもらったほうがよいとおもってそうしたのだが,そうすると自分も 2 つの論文を査読する義務が課せられる. その査読をようやくおえたということだ.
2 つのうちの 1 つは自分がやっていることにすこしちかいところがあったが,それでも材料は特殊なものであり,(ソフトウェア工学以上に) なじみがない. もうひとつはさらになじみのない世界だ. 自分の論文を査読してもらいたいからといって,機械工学的な素養のない私が査読をひきうけるのは大胆だともいえる. ともかく,これらも引用されている文献をネットからダウンロードしてきて,ながめてみる. そうして,論文の位置を理解し,コメントを書くことができた.