安倍自民党総裁 (首相) が日本国憲法の第 9 条改正をとりあげた. ついにここまできたかとおもう. 9 条以外にも重要な改正項目があるなかで,姑息な方法をとらず,対立の焦点になっている 9 条をズバリととりあげたことを評価したい. 安倍氏に私が望むのは国民の憲法議論を推進することだ. 改正・非改正で 2 つに割れている国民が本気で憲法の議論をして融和することを期待したい.
日本国憲法の最大の問題はその制定過程で国民の意見がとりいれられたものの,国民は議論に参加していないことだとおもう. 国会は非公開で議論し,国民や GHQ がのぞんでいるのとはちがう方向にむかったため,GHQ がいそいで原案をつくることになった. それが,日本国憲法の大半の部分が支持されているにもかかわらず,憲法が十分には根づかず,改正・非改正の対立を生んできた原因だろう.
改正論者と非改正論者のあいだで議論がふかまらず,対立が先鋭化している. 議論をふかめて,対立が解消しないまでもある程度のコンセンサスが国民のあいだにある状態にする必要がある. 議論の結果として安倍氏がいうように 9 条に条文を追加するのが私もよいとおもう. しかし,現在のままにするのがよいというコンセンサスができれば,それでもよいとおもう.
9 条だけでなく他の条文についても議論してコンセンサスができることを期待する. 基本的人権にしても,日本国憲法が制定されてからすでに 60 年以上たち,追加が必要だ. たとえば,日本国憲法には「通信の秘密」が規定されているが,制定当時はまだコンピュータもなかった. セキュリティやプライバシーに関する人権がとりいれられる必要があるとおもう. (5 月 14 日に表現を一部改訂)