3D 印刷のさまざまな話題をうまくまとめている All3DP というサイトが 3D 印刷の 34 のトラブルシューティングという,失敗事例とそれに対する対策をまとめている. 対策の記述はかならずしも便利なかたちで書かれていないが,事例写真のなかにはいくつか興味深いものがある.
最近ではトラブル対策の本も出版されているが,無償でみられるサイトのなかでこれだけさまざまな事例をとりあげているものは,ほかにないだろう.
事例写真のなかで,つぎの 4 つは目的を達成できていないという点ではたしかにトラブルなのだが,おもわぬ構造ができているおもしろい例とみることもできる.
事例 9 (左下の写真) はサポートをつくるつもりだったがメッシュ状の構造ができてしまったものであり,私が書いた次の文章でとりあげているのと同様のものだ (ほかにも論文を書いているが,このブログでも「3D ゆらぎ印刷」などとして何回かとりあげている).
- 金田 泰, 「3D プリンタ」で自然のデザインを楽しもう, I/O 2015-8.
- Kanada, Y., FDM 3D-printing as Asynchronous Cellular Automata, 8th International Workshop on Natural Computing (IWNC8), 2014-3
- Kanada, Y., Self-organized 3D-printing Patterns Simulated by Cellular Automata, in Y. Suzuki and M. Hagiya, ed., Recent Advances in Natural Computing, 2016.
事例 25 (右上の写真) は設計にはないななめの線がはいってしまうというものだが,これも事例 9 でみられるのと同様の原因でななめの線ができるのだとかんがえられる.
事例 27 (左下の写真) にも,ゆらぎのある同様の構造がみられる.こういう構造がまわりになにもない状態であらわれたのが事例 30 (右下の写真) のヒゲだとかんがえられる.
これらの構造はとても興味ぶかいものであり,それが設計にはなかったものだからといって,無視し,捨ててしまうのは惜しい. こういう「自然の造形」をいかした 3D 印刷があってよいとおもう.