ここ 1 年以上,螺旋 3D 印刷における 3 種類の波の合成によってつくられるパターンを追究してきた. 波の合成は線形のモデルなので予想できることしかおこらないとかんがえていたが,非常にこまかい変形の波をつかうことで,予想のつかない複雑なパターン (クロス・ヴィブラート・モアレ (CVM) パターンとよぶことにした [18-4-7 追記]) があらわれることがわかった.
線形合成は物理的にはある範囲でしかはたらかない. 範囲をこえると 3D 印刷という物理現象は非線形性がつよくなる. どの波でも振幅がおおきくなると,隣接するべきフィラメントのあいだにすきまができて,かたちをなさなくなる. 変調による波の場合は,振幅がおおきくなると逆に突起ができることがあることがわかり,クリスマス・オーナメントなどでつかってみた. しかし,これらの場合には,予想できない複雑なパターンがあらわれることはなかった.
たまたま,クロスするヴィブラートの波 (垂直にフィラメントがゆれる波) に非常にこまかい振幅の波をかさねてみたところ,とても複雑なパターンが生成された. その例を Repetier のグラフィックスでいくつかあげる.
これらのパターンはクロスするヴィブラートの正弦波と,とてもこまかい変形の縦方向の波とを合成するだけでつくられる (2020-3-5 用語訂正). いずれの波も周期的なので,できるパターンも周期的になる [18-4-7 追記]. そのパターンからもとのヴィブラートのパターンがみえる [18-4-7 追記]. ヴィブラートの波はちいさくてわかりにくいので,8 倍に拡大したものを図示する.
縦方向の波だけを図示すると左下の図のようになる. 縦方向の波なのに横方向の波があるようにみえるのは,波数がとてもおおいので螺旋が 1 回上昇するあいだに 20 波経由するからだ. これも振幅を 8 倍に拡大してみると右下の図のようになる.
最後に実際に印刷したものの例を写真でしめす. グラフィクスでは表面のかたちしかわからないが,光が透過・反射・屈折してかがやくようすがわかる.
追記 (2018-4-4): 上記のクロスする波だけの図をよくみるとモアレ縞がみえるが,そのパターンは縦縞をかさねてできたものとよく似ている. つまり,これらの複雑なパターンは基本的にはモアレ縞なのではないかとかんがえられる. 通常のモアレ縞はこれほど複雑なパターンをつくらないが,正弦波をえがくフィラメントによってとても複雑なパターンが生成されたということだろう.