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DIY (日曜大工) とものづくり・実験:3 次元印刷 (3D printing)・CAD

あたらしい AnyCubic Delta 3D プリンタの導入

ここ 2 年以上のあいだ,3 台の AnyCubic Kossel 3D プリンタだけをつかってきた. Renren 3D というブランドの Kossel も買ったが,最後までくみたてないまま放置していた. ようやく,あたらしい 3D プリンタを導入しようとかんがえて,AnyCubic のリニアスケール型のデルタ型プリンタを買った. ボードもソフトウェアも以前とはかわっていて,すぐにはうまく動作しなかったが,結局,ソフトウェアはこれまでつかってきたものにとりかえて,ほぼうまく動作するようになった.

どうせ買うなら,これまでよりおおきいほうがよいとかんがえて,直径 23 cm まで印刷できるものにした. これまでのは直径 16 (~18) cm がやっとだった. また,これまでつかってきたのはプーリ型だったが,リニアスケール型つまりヘッドの移動にリニアスケールを使用しているタイプにした. プーリ型とどれだけちがうか,ためしてみたかった.

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とどいてから 3 ヶ月くらいは放置してあったが,ようやく余裕ができたので,くみたてた. これまでつかってきたものは完全にバラバラな状態からくみたてたが,今回のキットはかなりの部分がすでにくみたてられている. 2 個の 3 角形部分はすでにくみたてがすんでいる. ただし,ゆるんでいるネジがあるので,それを締めつけるのはわすれないようにしなければならない. ヘッドのくみたてもすんでいて,ロッドもすでについていが,ここもネジの締めつけが必要だ. フィラメントの冷却用のファンとエア・ノズルもくみたてずみだが,これだけでは十分に冷却できないから,対策が必要だ. しかし,これはあとまわし.

プリントベッドまわりも,かなり改善されている. これまで買った AnyCubic Kossel のなかにはベッド用のヒータがついているものもあったが,ベッドにうまくフィットしないのでつかえなかった. このプリンタはベッドにヒータがあらかじめつけてあるし,ベッドは一様な温度になるように 3 mm くらいのアルミ板でできている. ベッドの表面にはざらざらしたプラスティック板 (カプトン?) をはるようになっていて,そのうえに直接フィラメントがのるようになっている. これまではマスキング・テーブをつかってきたが,しょっちゅうやぶれて,はりかえが必要になっていた. この板をつかえば,頻繁にはりかえる必要がないのでよい.

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付属品として 6 角レンチなどがついているのは以前からだが,このキットには,いろいろな道具が付属している. ニッパやフィラメントをはがすための道具までついている. ニッパやピンセットはかなり精度がたかい. 中国製品はただ付属させてもつかえないものが多いが,ちゃんとつかえるものを選んでいるということだろう.

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以前のプリンタには Arduino 互換 CPU ボードと RAMPS 1.4 という 3D プリンタ用ボードがつかわれていたが,このプリンタには Tri-Gorilla という 1 枚だけのボードがついている. ドライバだけかえれば,あとはほぼ互換のようだ. Arduino 互換ボードをつかうと電源コネクタと USB コネクタが反対側についているので,その USB コネクタと外部接続用の USB コネクタをケーブルでつなぐ必要があった. しかし,この基板ではボードの USB コネクタ (下の写真の左中央) に直接外部からのケーブルをつなぐことができる. そのかわり,この基板を固定すると一番端の電源コネクタのネジ (下の写真の左下) をしめることができなくなっている. もうすこしこのコネクタを内側につけられなかったのだろうか?

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くみたておわって PC につないでみたが,USB ポートが認識されない. ドライバ (CP210x) をいれたり,あれこれやってみたが,変化はなかった. これまでつかってきたプリンタでは CPU ボードに電源アダプタと USB の両方から電源が供給されていたが,このプリンタは USB からの供給がないために認識されないだけだとわかった. 電源スイッチをいれると PC につながった.

ボード上にはすでにファームウェアがのっているので,PC をつかわずにできることをためしてみた. ヘッドのレベル調整を自動的にやってくれる機能がついているので,それをためしてみた. レベル調整のためのセンサ (下の写真) には磁石がついているので,それをヘッドの下につける. この状態でディスプレイについたツマミをつかって自動調整を起動する. すると,ヘッドがベッドの上をうごきまわって調整するようになっている. この調整をあらかじめボードにのっているファームウェアをつかって自動調整をやると,だいぶ時間がかかる. 最新のファームウェアにすると,もっと機敏に動作するようになった. ところが,最初は調整結果を保存する方法がよくわからなかったので,何回かやっているうちに,うまく動作しなくなった. 理由はわからないが,ヘッドがずれた位置にきて,最後はベッドからはずれてしまう.

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PC 上で Repetier Host を動作させて接続をこころみた. しかし,反応がない. こういうときは Web で検索してみるわけだが,このプリンタやこのボードに関してはあまり情報がないようにみえる. それでも,Tri-Gorilla で検索してみつかったなかに,11520 ボーでつなぐとよいと書いているものがあったので,USB の速度を 11520 ボーにしてみた. これで一応つながったのだが,やはりちゃんと動作しない. おすすめのソフトは CURA なので,それをつないでみるともうすこしましな動作をするようだ. しかし,これでは私がやりたいことができない. しかも,このファームウェアのソースコードはついていない. そこで,あきらめて,これまでつかってきた Repetier のファームウェアをのせてみることにした. Arduino の開発環境を動作させて,それをコンパイルし,ロードする. これまでつかってきたプリンタとはサイズがちがうのだが,それは EEPROM のかきかえで対処できるはずなので,ファームウェアはかきかえずにロードした. これで,これまでと同様に 25000 ボーでつながるようになった.

ところが,エクストルーダがからまわりして,フィラメントがうまくおくられない. 原因はなかなかわからなかったが,これもネットでしらべてみるとステッピング・モータのドライバ (A4988) を交換してみるとよいというヒントがあった. A4988 は 4 個あれば動作するはずなのだが,5 個ついている. つかわれていない 1 個とエクストルーダ用の 1 個を交換すると,うまく動作するようになった.

これでフィラメントは一応おくられるようになったが,問題が 2 つある. ひとつはフィラメントのおくりの向きが逆だということだ. これは,私がつかっているファームウェアでは逆になるようにしているからだ. つまり,通常はフィラメントを下において上にむかっておくりだすが,私はフィラメントをプリンタの上においているので,おくりの向きを反転させている. このプリンタが使用しているエクストルーダは MK8 というものだが,このエクストルーダでは PTFE チュープを上下逆にとりつけることでおくりの向きを逆転させることができる. つまり,上と下と両方にチューブをとりつけるためのネジが切ってある. 逆にとりつけることで,ファームウェアをかきかえることなく,このプリンタで使用できるようになった.

もうひとつの問題は 4 倍くらいの速度でフィラメントがおくられることだ. これは,エクストルーダのちがいに起因しているのだが,EEPROM をかきかえることで解決できる. これまでは "Extr.1 steps per mm" の値を 370 にしていたが,これを 92 くらいにすればよい. (2019-3-30 改訂)

これまでのプリンタとのサイズのちがいも EEPROM をかきかえることで解決できる. このプリンタのための値はつぎのとおりだ.(2019-11-2 改訂)

"X max length" = 232.0
"Y max length" = 232.0
"Diagonal rod length" = 271.5 267
"Horizontal rod radius at 0,0" = 134.4
"Max printable radius" = 116.0

ファームウェアをとりかえたために自動レベル調整ができなくなったこともあり,古典的なやりかたで調整した. つまり,プリントベッドの中央と x が最大・最小の点,y が最大・最小の点という 4 点での調整を何回かくりかえす. レベルがあわないときはプリンタの上端にある 3 個のマイクロ・スイッチの位置や,リニア・スケールについた調整用のネジをまわして調整する. リニアスケールについたネジはなぜかまわしても調整できないので,おもにマイクロ・スイッチの位置をかえることで調整した. これらのマイクロ・スイッチの位置調整などは自動レベル調整できる場合でも最初に 1 回はやっておく必要があるから,この古典的な調整でそれほど余計な時間がかかったわけではない. EEPROM に設定したパラメタが適切かどうかをたしかめるためにも,一度は手で調整したほうがよいだろう. せっかく自動調整のためのハードウェアがついているから,次回からそれをどうつかうかは,かんがえる必要があるだろう.

ところで,このプリンタを買ってからまだ 4 ヶ月くらいだが,AnyCubic のサイトをみるともはやデルタ型のプリンタを売っていないようにみえる. (AnyCubic の Web サイトにはないが,AliExpress ではいまも売っていることをたしかめた -- 2019-3-30). 改良のつもりでいろいろやったことが裏目にでて,売れなくなったのかもしれない. 専用のボードをつかったことで Web からノウハウが得にくくなっているし,特殊なファームウェアをつかうことでカスタマイズできなくなっている. カスタマイズするには私がやったようにほかのファームウェアにとりかえる必要があるだろう. もしかすると,そういうことが売り上げに影響したのかもしれない.

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