螺旋 3D 印刷をつかえば,フィラメントを 1 回,螺旋状に巻くだけでさまざまなかたちをつくることができ,表面にまたさまざまなテクスチャ (模様) をえがくことができる. その「かたち」も「テクスチャ」も基本的にはおなじしかけでつくる. そのため,これまでそれらのちがいが説明できなかった. まだ完全な説明はできないとおもうが,そのちがいの本質的な部分が把握できたとおもうので,ここに書くことにする.
ひとことでいえば,すくなくとも 3D 印刷においてはスケールをかえるとそれに比例してサイズがかわるのが「かたち」,スケールをかえてもサイズがかわらないのが「テクスチャ」だということだ.
かたちがおなじだということは相似だということであり,スケールを 2 倍にすればかたちも 2 倍になり,スケールを半分にすればかたちも半分になる. それに対してテクスチャがおなじだということは,こまかさがおなじことを意味する. なぜなら,テクスチャのこまかさをかえると,もはやおなじテクスチャにはみえないからだ. とくに FFF 型の 3D 印刷においてはスケールをかえてもフィラメントのピッチをそれに比例してかえることは現実的でないから,基本的にはフィラメントのピッチは一定とかんがえてよい. フィラメントがつくりだす模様もテクスチャの一部となるから,フィラメントのピッチをかえない場合はモデルのテクスチャもおなじスケールにしなければ,印刷されたテクスチャは変化してしまう.
円筒座標または球座標の波のモデルを使用する場合は,波の周波数をかえずにスケールをかえればかたちは保存される. しかし,周波数をかえないとテクスチャはかわってしまうから,一定にするには周波数をスケールに比例させればよい.スケールを 2 倍にしたら周波数も 2 倍にすることで,おなじこまかさのテクスチャをえることができる.
さらに,波のモデルでは振幅はスケールに比例するようになっているから,かたちを一定にするには振幅も一定にすればよい. それに対してテクスチャについては,振幅一定でスケールをおおきくすると彫りがふかくなってテクスチャが変化するので,彫りを一定にするには波の振幅をスケールに反比例させる必要がある. 下図に例をしめす. これらの図はおなじ格子模様のテクスチャをもつ円筒だが,スケールは 2 倍になっている. これらのテクスチャは 2 つの横波と 2 つの縦波を合成してえられたものである.
ただし,ある模様がかたちなのかテクスチャなのかは主観による場合があるとかんがえられる. つまり,かたちなのかテクスチャなのかを客観的にきめることはできない. しかし,スケールをかえるときにそれがかたちであるとおもえば相似になるように変換すればよいし,テクスチャであるとおもえばこまかさを保存するように変換すればよいということだ.
いままで,かたちをかえるとテクスチャを保存することができず,あらたにデザインしなおすことが多かった. しかし,上記の理解にもとづけばテクスチャを保存することができるので,これからはおなじテスクチャをさまざまなかたちにうつしかえることができるだろう.
追記 (2020-11-25): 「波のモデル」ということばは漠然としすぎているので,「波合成モデル」とよぶことにした.