3Dデザインランプの 3D 印刷部品のなかで,60℃ をこえる高温になる部分には ABS を使用しています. 螺旋 3D 印刷で強度がある ABS の部品をつくるのはかならずしも容易でなくて,失敗するとフィラメントどうしがかんたんにはがれてしまいます. いろいろな印刷方法をためしましたが,どうやら,ファンで風をあてずに,これ以上高速化するとかたちが正確でなくなるというぎりぎりの印刷速度にするのがよいという結論に達しました.
PLA で印刷するときは,通常,できるだけつよい風をあてて冷却するのが最適ですが,ABS の場合はちがいます. PLA の場合は風がつよければつよいだけ,より高速な印刷が可能になります. PLA でも強い風のもとでゆっくり印刷すれば接着しにくくなるはずですが,通常,そういうことはおこりません. しかし,ABS の場合は風をよわくしないとフィラメントどうしが接着しないことが以前からわかっていました. 風があっても高速に印刷すれば接着しやすいのですが,ABS は粘度がたかくて,PLA とくらべると高速な印刷は困難です.
また ABS では,比較的高速に印刷できる場合でも風をつよくすると接着しにくくなります. その原因はよくわかっていませんが,推定してみます. 風があたると吐出したフィラメントの表面温度は急激にさがるのに対して,内部の温度はすぐにはさがらないとかんがえられます. かたちが正確にできるかどうかは内部の温度によりつよく依存するのに対して,つよく接着するかどうかは表面の温度に依存するのだとかんがえられます. そのため風をつよくしていくと,かたちが正確にできるようになるよりはやく接着しにくくなり,接着には不利になるのだとかんがえられます.
そういうわけで,ABS で印刷する際にはフィラメントにできるだけ風をあてないようにすることにしました. 3D プリンタはヘッドの根本の部分を冷却する必要があるので,そこにはファンの風をあてる必要がありますが,風を先端にあてるファンはとめるということです. そうすると印刷速度はややおとす必要がでてきますが,安定に印刷するための代償なので,やむをえません. Stratasys の 3D プリンタのように周囲温度を制御できるようになっていれば風をあてても強度がたもてるかもしれませんが,環境温度がひくい場合にはこの方法が最善ではないかとおもいます.
Web 上をみてみると,周囲温度を 100℃ にするのがよいとか,部品をひやすファンは不要とか,書いてあります.
ABS での印刷に関してはつよい風をあてて超高速の印刷を可能にしたという報告 (YouTube 動画) がありますが,それは強度の点からはたぶん適切でないだろうとおもいます.