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メディア・アート・イベント・エンターテイメント:音楽 (一般)

エマヌエル・バッハの CD でそのピアノソナタがロマン派につながる重要なものだと知った

エマヌエル・バッハ (C. P. E. バッハ) の交響曲全曲をきくことをおもな目的として 60 枚組の CD を買ったのだが,交響曲よりむしろピアノソナタが収穫だった. それはハイドンやモーツァルトをとびこえて,ベートーベンやロマン派につながっていく重要な作品だとおもう.

最近,交響曲の歴史をたどろうとしてきて,ミヒャエル・ハイドン,ヨセフ・ハイドンからエマヌエル・バッハにいきついた. エマヌエル・バッハの曲をできるだけ多く,安価に入手しようとして買ったのが Hänsler Classic の C. P. E. Bach Edition という 60 枚組の CD だ. この枚数でありながら 8000 円くらいで買える.

交響曲をたどるのがおもな目的だったが,交響曲は 60 枚のうち 4 枚しかない. もっとも枚数が多い (26 枚) のはピアノソナタを中心とするピアノ曲だ. 演奏しているのは Ana-Marija Markovina (丸子雛?) という 1970 年うまれのピアニストだが,このひとが エマヌエル・バッハの知られていなかった曲までほりおこして 2014 年に全曲を CD にしている. それからまだ 10 年もたたないうちに,たぶんほとんど無償でその録音をこの edition に提供しているから,1 枚 100 円程度という破格の値段で買えるようになったのだろう. なお,現在でももとの 26 枚組の CD は 11000 円くらいの値段で販売されている.

きいてみると,エマヌエル・バッハの作品のなかでも鍵盤楽器の曲がもっとも重要だということがよくわかる. 晩年の作品はダイナミクスやテンポの変化がはげしい「多感様式」によってつくられていて,ハイドンにも一時的に影響をあたえたということだが,なによりもハイドンやモーツァルトをとびこえて C. P. E. バッハを尊敬していたというベートーベンに影響をあたえ,ロマン派につながっていく音楽だ [脚注]. エマヌエル・バッハという作曲家のなまえは以前から知っていたが,これまでロココの作曲家として認識していた. しかし,旋律的にはロココよりむしろ大バッハの影響がつよく,様式としてはロマン派につながっている. そういうことはいままでまったく知らなかったし,Web で検索してもなかなか書いてない. ベートーベンへの影響について書いてあるページは HMV の「ファンタジア集」の解説だけしか,みつけていない.

[脚注]
D. B. Powers による「Carl Philipp Emanuel Bach -- A Guide to Research」(Routledge) の p. 7 には「最近 (2000 年ごろ),何人かの著者がエマヌエル・バッハを初期のロマン派として再評価する可能性を示唆している」とのこと.さらに最近,
Tyler Dellaperute による「Emanuel Bach: A Composer ahead of His Time」(Musical Offerings, Vol. 10, No. 1, 2019) にエマヌエル・バッハとベートーヴェン,ロマン派との関係を論じている.

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