エマヌエル・バッハ (C. P. E. バッハ) の曲は音の強弱やテンポのゆらぎがおおきい「多感様式」によっているという. しかし,当時の鍵盤楽器のために書かれた曲を現代のピアノで演奏する際にはむしろおさえて演奏するほうがよいのではないかとおもえる.
エマヌエル・バッハの時代にはまだピアノがなかったが,フォルテピアノ,クラヴィコードなど,そこにつながるさまざまな鍵盤楽器が開発された. しかし,それらの楽器はいずれそれらにとってかわるピアノほどの表現力はなかったとかんがえられる.
エマヌエルの鍵盤楽器曲は現在はピアノで演奏されることが多いが,最近の演奏の CD をきいて感じるのは,楽譜に書かれているとおりの強弱をつけるとつよすぎるのではないかということだ. ピアノのほうが当時の鍵盤楽器より表現力がゆたかだからだ. 当時の鍵盤楽器はピアノよりは強弱をつけて演奏する必要があったのではないだろうか.
エマヌエルの曲は激しい強弱やテンポのゆらぎがあり,それは「多感主義」に由来しているといわれている. しかし,当時の楽器にもとづく強弱指示を真に受けるとかえってその情感を,つまり「多感主義」をだめにしてしまうようにおもう.
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