上野に行って 2 つの展覧会をみてきた. 東京都美術館でひらかれているデ・キリコ展にはだいぶまえから行きたいとおもっていたが,比較的最近になって上野の森美術館でひらかれている石川九楊の書展に興味をもった. どちらも上野なので,まとめてみる機会をさがしていたが,きのう (2024 年 7 月 19 日),あわせてみてきた. デ・キリコ展は建物中心の絵も多いが,マヌカン (マネキン) の絵がおもっていたより多かった. 「石川九楊大全」は漢字とはおもえないグラフィック・スコアのような書にひかれて行ったのだが,多数のそういう書とともに,文字らしい書もみてきた.
最初に行ったのは石川九楊のほうだ.上野公園の南端近くにある上野の森美術館でひらかれている. こちらは無料. 最初の 2 室くらいは読めそうな (でも読むのはむずかしい) 字が書かれた書だ (左下の写真).
後半は古典文字風やグラフィック・スコア風の書だ (右上の写真). この写真のようなこまかい書はほとんどテクスチャにしかみえないが,もっと字数がすくないと鳥が飛んでいたり,雨がふっていたりという風景が字で (文章と絵画風の字とで) 描かれている.
6 月にはグラフィック・スコア風の書を機械的に音になおして演奏するコンサートがひらかれたらしい. いわゆるグラフィック・スコアは人間が解釈して演奏するためのものなので解釈は主観的になるが,より客観的な演奏も可能なのかもしれない.
書籍が販売されているコーナーもあり,作品全集は 20 万円以上するが,この展覧会のカタログは 3000 円なのでそれを買ってきた.
デ・キリコ展は上野公園の奥の東京都美術館でひらかれているが,猛暑の日にそこまで行くのはとても暑い. 展示はある程度は年代にそっているが,基本的にはテーマで分類されている.
「形而上絵画」はいろいろな時期におなじ題材で描かれているので,それらがならべられている. あとの時代には追加されているものもあるが,おおきなちがいがあるとはおもえない. 1 枚の絵のなかに焦点がちがう遠近法で描かれた部分が共存している絵がある. 焦点がちがうということは視点がちがうということであり,複数の視点が 1 枚の絵に共存しているという点ではピカソのキュビスムの絵にちかいようにおもえる (左下の絵.「ジョルジョ・デ・キリコ -変遷と回帰-」から引用).
マヌカンとよばれる,顔が書いてない人体の絵が初期から晩年まで描かれているが,それらが後半の展示室にあつめられている. 顔がないだけでなく,足が異常にみじかかったりする. 全体的に空虚な人体もあるが,胴の部分にそのひと (たとえば哲学者) をあらわすものが描かれている場合もある (右上の絵).