この本は教育基本法制定から改正論の歴史と条文の抽象的な解釈がのべられているが,改正論の背景となっている現在の教育における具体的な問題点との関係がのべられていない. 改正に反対するのであれば,すくなくとも,いま教育現場でおこっているさまざまな問題が教育基本法に起因するものでないことをしめす必要があるし,できれば問題を解決するうえで教育基本法がどう役立つのかをしめしてほしい. こうした記述がない以上,改正への反対論としては失敗しているとかんがえざるをえない.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: いま、教育基本法を読む@ , いま、教育基本法を読む@Amazon.co.jp.
Amazon には本のリストを登録することができます. たいていのリストは,なぜそれらの本がひとまとめになっているかもよくわかりません. そのなかで 「我が家の教科書~「教育改革」は当てにならない」 は,ありふれた教育書には興味がなくなってきた私にも,リストされた本のおおくに興味がもてます.
本書では,第 1 章を中心として,ゆとり教育のさまざまな深刻な問題がとりあげられている. しかし,第 2 章ではゆとり教育の理念がとりあげられて検討され,結論としては今後もこの理念を実現するべく,ゆとり教育をつづけていくべきだといっている. しかし,ゆとり教育の理念がどうすばらしいのか,第 2 章でとりあげられている 寺脇 研 のことばは,すくなくとも私には説得力がない. 著者がどうしてそのことばに説得されたのかがわかるように書かれないかぎり,消化不良からすくわれないままである.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: ゆとり教育は本当に死んだのか@ , ゆとり教育は本当に死んだのか@Amazon.co.jp.
日本の大学教員は論文数などの業績が諸外国にくらべてすくないといわれています. 業績をあげなくても大学教授をやめさせられないことにそのおもな原因をもとめる議論がさんざん,なされてきました. そのため,教員を評価する制度がしだいにとりいれられてきました. 地位が安定していることも業績がすくないひとつの理由ではあるのでしょうが,ほんとうにそれがおおきな原因なのでしょうか? すくなくとも,雑用がおおいことがおおきな原因になっていることは,まちがいないとおもえます.
日本では,医師も教師も 「先生」 とよばれてきた. それは,これらの職業についたひとびとが尊敬されてきたからにほかならない. 「先生」 とよばれていることはいまでもかわらないが,その意味はすっかり,かるくなってしまった. 「先生」 の意味をもう一度,かんがえなおすべきなのではないだろうか? 医療や教育のさまざまな問題を解決するひとつのキーがここにあるとおもう.
現代の大学生や大卒で就職した若者たちと,そういう若者たちをおしえる大学教授や会社員,若者たちの親にきいた結果をまとめた本である. タイトルも内容も 「下流大学がわるい」 というトーンだが,すなおに読めば大学以前の教育や親の問題のほうがおおきいように読める. バカにされている若者が読めば気分がわるいだろうが,調査にもとづいた問題提起として価値がある. 「…さ」,「…ね」 などの表現をつかった文体は新書としてはいささか異様だが,これもタイトルとともに事態の深刻さをすこしやわらげる意図か?
評価: ★★★☆☆
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日本では 「幅広く底上げする」 教育から 「一部の優秀な子を引き上げる」 教育に方針転換することによって教育格差が拡大し,親の収入や学歴などがこどもの収入や学歴をきめるようになってきている. この本はこのような現象を実例をもとに具体的に検証している. 「底」 にきびしい方針に著者が異をとなえているのはあきらかだが,この問題に対して,予算をふやせという以上の明確な答案はしめしていない. いろいろなエピソードがもりこまれてはいるが,迫力は感じられない.
評価: ★★☆☆☆
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350 ページをこえる,新書としては大作である. 大学法人化へのみちすじを行政改革とグローバル化,筑波大学の設立,東大医学部紛争にまでさかのぼって検討している.
行政改革とグローバル化はまだそれほどとおい過去のことではないが,筑波大学が設立された時代にはまだ私にはその背景がよく理解できていなかった. 当時は上からの改革ということで反感をもっていたが,この本を読むことで,あらためて改革の必要性を問いなおすことができた. しかし,著者は筑波大学の改革が結局は挫折し,従来の大学にもどってしまったと書いている.
法人化に関してはこの本が書かれたのはまだ進行中の時期だが,各大学のとりくみが紹介されている. その効果に関しては続編に書かれているのだろう.
評価: ★★★☆☆
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教師や学校に不当な要求をするモンスター・ペアレント,日本だけでなくアメリカやイギリスでも類似の現象があるという. イギリスの 「フーリガン・ペアレント」 は教師に暴力をふるうというから,日本のモンスター・ペアレントにちかくて,ある意味ではより,たちがわるい. しかし,アメリカの 「ヘリコプター・ペアレント」 は大学生になった子供についていって,大学教育に口をだすという. 日本でもありそうだがモンスター・ペアレントほど深刻だとはおもえない.
外国の状況を紹介するのもよいが,モンスター・ペアレントとの関係はよくわからないし,対策もそれぞれちがうのではないかとおもう. いっしょに論じる利点がよくわからない.
評価: ★★☆☆☆
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科研費をはじめとする政府の研究資金を獲得するにはどうすればよいのか,とくに申請や面接のこなしかたについて書いている. この種の情報は比較的すくないので,まわりに得意なひとがいなければ参考になるだろう. 成功した研究者へのインタビューもいくつかあって参考になる. しかし,資料編をのぞくとわずか 110 ページほどしかない. 研究資金にもいろいろな種類があり,それぞれ採択基準などもちがうことをかんがえれば,いかにもうすい. できることなら,もっとはばひろく調査してから書いてほしかったとおもう.
評価: ★★★☆☆
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5 章で構成されるこの本の 4 章までを暗澹たるおもいで読んだ. 大学教員になって食っていけるようになるためには,師事するに値する教授にとりいってイエスマンになり,チャンスをつかむことが必要だ. 大学ならどの世界でもそうというわけではないが,そういう 「白い巨塔」 のような世界はいまもあるのだろう. そういうものにすがらなければ食えない時代になったということだろう. しかし,5 章にはどんでん返しが待っている. 4 章までに書かれた現時点での解にとってかわれる解にはなっていないが,もっと本質的な解にせまろうとしている. もしもこの章をよまずにこの本をほうりだしてしまうとしたら,著者のかんがえの半分以下しか見ずにおわることになるだろう.
評価: ★★★★★
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40 代で銀行マンから大学院生になり大学講師になった著者の経験をつづっている. タイトルには 「銀行」,「企業」 というようなことばはないが,それが内容の半分を占めている. この本の読者のおおくは大学院生として,あるいは大学講師としての著者の経験から,いろいろな知識をえるだろう. しかし,おなじ本のなかに銀行の裏事情が書いてあっても,それはタイトルにも Web の内容紹介にも書いてないから,それを知りたいひとにはつたわらないだろう. ほんとうは 2 冊にわけて書いたほうがよかったのではないかとおもう.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 大学教員の道@ , 大学教員の道@Amazon.co.jp.
博士号をとったものの就職できず,無給にちかいのに大学で必死に働き,論文を書くフリーターをえがいている. おなじ著者の 「アカデミア・サバイバル ― 「高学歴ワーキングプア」 から抜け出す」 をさきに読んだ. それとくらべるとこの本はまだ救いがあるが,それはこの本以降にさらにきびしい状況になっているということだろうか.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 高学歴ワーキングプア@ , 高学歴ワーキングプア@Amazon.co.jp.
大学教授になるための資格,こころがまえ,勉強のしかたなど,さまざまな内容がかかれている. 大学教授になりたいという動機にはいろいろあり,それぞれに対応しようとしているが,きびしい (無理な?) 要求もしている. つまり,「自由時間のすべてを研究活動に使う」,家事労働も研究の敵と書いている. 対談やアメリカの大学教授の紹介などもふくんでいて,大学教授になるつもりのない身にもおもしろい.
評価: ★★★★☆
関連リンク: 新 大学教授になる方法@ , 新 大学教授になる方法@Amazon.co.jp.
MIT をはじめとするアメリカの大学が講義ビデオや教材を Web にのせ,日本や他の国の大学もそれにならっている. この本はこういう,まなぶためのコンテンツを提供する側の話題が中心になっている. まなぶ側についても DIYbio,TakingITGlobal など,いくつかのコミュニティが紹介されていたり,コラムとしてそういうコンテンツでまなんだひとの経験談がはいっていたりするが,まだよわい.
この本を読んでも,私には,どう選択してそういうコンテンツを利用したらよいのかわからない. この本のなかにも書いてあるが,いまは,まなびたいひとそれぞれが試行錯誤をくりかえすほかはないのだろう. 提供されているコンテンツやサービスについて知ることはできるが,まだ 「知の革命」 までには距離がある.
評価: ★★★☆☆
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少子化がすすむなかで,おおくの大学が定員割れして,いきのこりをかけた競争がおこっている. 著者は実名をあげて日本の大学がかかえる具体的な短所や長所を指摘し,問題解決のための案をしめしている. とくに重要な指摘は,これまで大学は 「研究機関」 という面が強調されてきたが,「教育機関」 という面が重視されるべきだ,つまり大学教授は教育のプロでなければならないということだろう.
少子化がとまらなければ大学が淘汰されるのはさけられないだろう. しかし,著者が指摘するように大学教育が改善されていけば,日本の将来はよりあかるいものになるのではないだろうか.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 大学破綻@ , 大学破綻@Amazon.co.jp.
「機械音痴」 という著者にもちこまれた出版社の企画. 著者はこれを機に IT をとりいれた教育を取材し,iPad をつかった教育をみずからこころみて,その効果をたしかめている. いかにも底があさいが,それが日本の現状でもあるのだろう.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: iPadで教育が変わる@ , iPadで教育が変わる@Amazon.co.jp.
「教えるな!」 というメッセージは教師だけでなく親にもむけられているとかんがえることができる. しかし,この本で論じているのは教師のあるべきすがたであり,そこから親がえられるものは比較的すくないようにおもう. 教師論としても異論はおおいのではないかとおもうが,それについては教師でない私はふれないことにする.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 教えるな!@ , 教えるな!@Amazon.co.jp.
この本は,日本の過去にとらわれない 「デジタル脳」 をもつネット時代の若者に,とくにその教育にもっと投資するべきだと主張している. ことばやコミュニケーション力などを強化する教育が重要だという. そこまでは同意するひとがおおいだろうが,著者はさらにデジタル革命の成果をもっと教育にいかすことを主張している. しかし,どういかせばよいかは十分明確にされていない. 慶応の塾長だった著者はこの教育改革を実践しようとしたのだろうが,塾長選挙でやぶれてしまった. 慶応ではこの主張がみとめられなかったということだろうか.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 『デジタル脳』が日本を救う@ , 『デジタル脳』が日本を救う@Amazon.co.jp.
日本の大学や学生がかかえる問題点をあぶりだしている. しかし,系統的な分析ではないので,よわいという印象をうける. 改善提案もいくつかしているが,解決にはほどとおいという印象だ. これでは日本の大学に未来はない.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: 危機の大学論@ , 危機の大学論@Amazon.co.jp.
理想の教育を実現したいが大学の経営をかんがえるとそれができない. 矛盾にみちた弱小大学の現状をえがいている. 一度に何 100 人の学生におしえなければならず,そのレベルはそろっていない. どこに焦点をあわせて講義すればよいのかわからない. やる気のない学生にどうすればやる気をださせることができるか… 弱小大学の教員になろうとするひと,そしてもしかしたら経営者にとってもいろいろなヒントがあるだろうが,しかし,こたえは自分でみつけなければならない.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 崖っぷち弱小大学物語@ , 崖っぷち弱小大学物語@Amazon.co.jp.
「ホームレス博士」 というタイトルだが,著者はホームレスの博士が (どれだけ) いるのかをしらべたわけではないようだ. その意味では,この本の内容もふくめて,誇張されている面はある. しかし,基本的には就職できずに非常勤講師をいくつも兼任している博士たちの,まだあまり知られていない実態を紹介している. 読者は著者や対談相手の鈴木謙介からまなぶことはできるだろうが,現状を改善する方法が書かれているわけではない.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: ホームレス博士@ , ホームレス博士@Amazon.co.jp.
教養主義は死んだといわれてひさしい現代に,著者は大学における教養教育の重要性を初年次教育とあわせて強調している. 東大が教養学部をのこしたことが成功であったのなら,教養教育が重要なのはたしかだろう. しかし,「教養とは異分野の人と恊働するために欠かせない能力であると規定すると,教養の意義はとても分かりやすくなるはずです」 という記述はまったく理解不能だ. 教養についてのかんがえがふかまらないまま大学の教養教育について論じても,十分な議論はできないだろう. 初年次教育を教養教育とあわせて論じていることも,議論がふかまらない理由のようにおもえる.
評価: ★★★☆☆
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Google が提供するさまざまなツールやエバーノート,スカイプ,フェースブックなどのツールを研究にどうやくだてることができるかが書かれている. この手の一部の本とはちがって,著者の経験にもとづいて,ほんとうにつかえるやりかたを書いているのだろうし,先端的なつかいかただといえるだろう.
しかし,これだけさまざまなツールをずっとつかいこなしていけるのだろうかという疑問も感じる. メールにふりまわされないために G メールをつかうことをすすめていて,それはおおくのひとがこころみていることでもある. しかし,メールにふりまわされるかどうかは,著者もところどころ書いているように,環境よりつかいかたの問題だから,環境によって問題が解決されるかのようなかきかたは適切でないだろう. また,論文管理のためのツールはむかしからあるが,あまり決定版といえるものはないから,ここで紹介されているメンデレイがものになるのかは疑問だ.
とはいえ,ここにはさまざまなヒントがあることはたしかだ.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: クラウド知的生産術@ , クラウド知的生産術@Amazon.co.jp.
この本を読んでみると,最近の大学論のおおくがいかに近視眼的だったかがわかる. おおくの本がここ数 10 年のスコープしかもっていないのに対して,この本は中世からの歴史をひもとく. そして,現在すすめられている改革のおおくがすでに 1971 年の 「四六答申」 で提案されていることが指摘されている. 大学問題にかぎらず,現代がかかえる問題をかんがえるうえで歴史的な認識が重要であることを,あらためて感じさせる.
評価: ★★★★☆
関連リンク: 大学とは何か@ , 大学とは何か@Amazon.co.jp.
著者が大学でおしえているのはマンガであり,おしえる内容も方法も 「大学論」 というタイトルから読者が普通に想像するのとはだいぶちがっている. マンガが大学でおしえるべきものなのかどうかは,読みおわってもなお,わからない. しかし,著者がいいたいのはこれが現在の大学のすがただということだろう. あとがきに著者はつぎのように書いている. 「大学でこの 4 年間,ぼくが行ったことは若いときからずっとものを書きながら考えてきたことを 「教える」 という目的の中で再構築する,ということだ. それは自分の思考を 「批評」 ではなく 「方法」 として徹底してつくりかえることであった.」 このことばには深く共感する.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 大学論@ , 大学論@Amazon.co.jp.
名門といわれる 36 の中高をかいまみて,授業のようすや教育方針などについて書いている. 新書 1 冊に 36 校なので,もともと,それほどつっこんだ内容は期待できないが,それにしても授業の表面や教師が言ったそのままを書いているだけという印象がぬぐえない. もし内情に気づいても,それを本に書いたらまずいということかもしれないが…
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: 名門中学 最高の授業@ , 名門中学 最高の授業@Amazon.co.jp.
この本ではまず,1949 年から 60 年間にわたる高校の東大合格ランキングを左ページの表に書き,右ページにその解説を書いている. これらの表の資料価値がこの本の一番の価値だろう. そのうえで,さらに地域ごとに分析したり,宗教系の高校について分析したり,さまざまな分析をくわえている. 60 年のあいだにきえていった学校もあるが,とくに 1960 年代からは,さまざまな制度改革があったにもかかわらず,しぶとくいきのこっている学校があることがわかる.
興味があるのは過去よりも未来だが,今後はどうなっていくのだろう. 「東大合格」 そのものが高校の評価基準としての価値をうしなっていく可能性がたかいようにおもうが,それでもこれまでの傾向がつづいていくのだろうか. それとも,なにかおおきな変化があるのだろうか.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 東大合格高校盛衰史@ , 東大合格高校盛衰史@Amazon.co.jp.
現代の教育をたてなおす方向をリベラルな立場からさぐっている. 特定の科目や特定の題材にしぼった議論もふくまれているが,全体としては抽象的であり,教育現場をよくしらないものにとっては,この議論と現実の教育とを関係づけにくい. 現場にいる教師には有用な考察であるのかもしれない.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 考えあう技術@ , 考えあう技術@Amazon.co.jp.
さまざまな大学人が 震災やそれと研究との関係などについて語っている. 文系の研究者が多いが,理系のひともいる. さまざまなかんがえを知ることができるのはよいが,1 人平均 6 〜 7 ページのインタビューでは十分な議論にならない. もっとじっくり議論すれば共感できるかもしれないが,断片的で,ひっかかる点のほうがめだつ.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: ポスト3・11 変わる学問@ , ポスト3・11 変わる学問@Amazon.co.jp.
工学院大学の講義で Macbook Air をつかっている. PowerPoint を買ってつかってもよいのだが,とりあえず,Apple が提供している Keynote というソフトウェアをためしている. まだなれない点もいくつかあるが,しだいに解決されてきている.
小学校から高校までの授業方法に関する本は多数あるだろうが,大学に関してはすくない. 大学教員がこのような本を (読むべきなのにもかかわらず) 読もうとしないからなのだろう. あるいは,大学での講義のやりかたも高校とそれほど差がなくなっているから,専用の本はいらないということかもしれない.
第 1 章はシラバスの書き方にあてられているが,これは大学ならではだろう. ワークショップのような学生主体の授業のすすめかたに重点があるが,なかなかそこまでできない教員が多いだろう. もうすこし手間のかからない方法で学生をひきつけられないかとおもうが,そういうノウハウはあまりえることができなかった.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 授業方法とデザイン@ , 授業方法とデザイン@Amazon.co.jp.
大学の非常勤講師をしているので,学生に 2 回,レポート課題をだした. レポートの形式には注意をはらっていなかったので,それを採点基準にはいれていなかったが,いまおもうと,内容はともかく形式がととのっているかどうかも採点するべきだったようにおもう. レポートのかきかたをあまりに知らない. どうにかする必要がある.
教師や教育関係者への講演にもとづく本であり,一般人にはわかりにくい部分もある. しかし,プロフェッショナルとしての教師のあるべきすがたは,他の職業にも通じている. 仕事に対してきびしく意識的にたちむかい,常に努力をおこたらない. そこからまなべることはすくなくないだろう.
評価: ★★★★☆
関連リンク: 教えるということ@Amazon.co.jp.
ネグロポンテが所長だった時代,メディアラボにはしょっちゅう,ひきつけられていた. 著者は 2006 年から 5 年間,3 代めの所長をつとめた. この本はその時代の記録といってもよいだろう.
この本によれば,著者はヘッドハンティングによって所長になるが,それまでメディアラボがどういうところなのか,よく知らなかったらしい. そういう著者にひきいられたメディアラボは,いまでも魅力的な場所であることにかわりはないが,この本を読んでも,紹介されている研究テーマにかならずしもひきつけられない. 日本から影響をうけてはじめた研究もあるという. 4 代めの所長である 伊藤 穰一 にはせびメディアラボをもっと魅力的な場所にしてもらいたいものだ.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: MITメディアラボ@Amazon.co.jp.
どう研究するべきかではなくて,研究者はどうふるまうべきかを書いた本だ. プレゼンテーションのしかたというよう名,研究者むきのほかの本に書いてあることもある. しかし,ほかの書評にもあるように,研究者以外のプロフェッショナルに共通のことがおおい. それを研究者むきに書くことで研究者によりつよいメッセージがつたわるようになっているといえるだろう. しかし,もっと研究者特有のことがあるようにおもえる. プレゼンテーションに関しても内容は一般的であり,専門家むけの研究発表に適したものではないとかんがえられる.
評価: ★★★★☆
関連リンク: 研究者の仕事術@Amazon.co.jp.
タイトルからは一般的な内容を想像するが,これは放送大学についての本だとかんがえたほうがよい. 著者は放送大学の学長となって改革をすすめ,かなり成功したという. 最後の挑戦は官僚などと対決して実現されなかったというが,それ以前のさまざまなこころみは成功してきたようだ.
放送大学という組織の紹介としてはよいが,一般の読者が興味をもつのはそこでおこなわれている生涯教育の内容だろう. この本からはその点はあまり知ることができない.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 新・学問のススメ@Amazon.co.jp.
タイトルには 「教科書」 がふくまれているが,内容はデジタル教科書よりもデジタル教材の有効性を主張している. この本を読んでも教科書じたいをデジタル化することの利点はあまりわからない. 教材に関していえば,コンピュータをつかうことでさまざまな可能性がひろがり,世界とつながるから,さまざまな利点があるだろう. しかし,この本のなかで紹介されているさまざまな教育用のソフトやコンテンツのおおくは,とおからずきえていくものだろう. いずれ決定版がでるかどうかわからないが,それまでクズ・ソフトをつかわされクズ・コンテンツをみせられる生徒はかわいそうにもおもえる.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: デジタル教科書革命@Amazon.co.jp.
タイトルの 「デジタル教育」 についてもすこしは書いてあるが,中心的な話題は日本の教育はどうあるべきか,「ゆとり教育」 がなぜおかしな方向にいったか,ほんとうはなにをめざしていたかなどということだ. 「ゆとり教育」 に関してはさまざまな誤解があるから,それをよりただしく理解するために有効な本だとおもう. タイトルにまどわされると,著者がいいたいことがわからなくなる.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 緊急提言@Amazon.co.jp.
文科大臣になってしばらくはおとなしくしているようにみえた田中眞紀子が,外務大臣のときのように,ついに本性をあらわした. 数年間準備をかさね,認可は時間の問題だったはずの 3 大学を不認可とした. 強引なやりかただが,このくらいのことをしないかぎり政治はかえられないともいえる. これまで民主党でもここまでやるひとがいなかったから,結局,ほとんどなにもかえられなかったわけだ. この 「事件」 がどっちにころぶかわからないが,よいほうにいくことを期待したい.
きのうは田中大臣による 3 大学新設不認可がよい方向にむかってほしいと書いた (「吉とでてほしい,田中眞紀子大臣の強引な 3 大学不認可」). しかし,それから 1 日もたたないうちに田中大臣は決定をひるがえし,3 大学を認可すると明言したという. まだ最初の発言から 1 週間もたっていない. そんなにすぐに決定をひるがえすのは,なんの成算もないまま発言したとしかかんがえられない. こんな無責任な大臣にはすぐにやめてもらいたい.
1992 年におけるアメリカの大学と日本の大学とのちがいを論じている. 20 年たって,シラバスのように日本の大学がアメリカにちかづいた部分もあるが,差があるままの部分もある. アメリカのほうがすべてがよいわけではないが,いまでもまなぶべきことが多々ある. なぜとりいれられなかったのか,これからとりいれるべきなのか,この本を読んでかんがえてみるとよいだろう.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: グローバル化時代の大学論 1@Amazon.co.jp.
著者は大学キャリアセンターでさまざまな問題を目にし,それをこの本に書いている. ほんとうはみずから問題の解決ができればよいのだろうが,著者にはそれができないからこの本を書いているのだろう. 学生にほんとうのことをいえればよいが,「リストカットされてはこまる」 からいえない. 企業からもう求人をださないといわれるとこまるから,企業にもいいたいことがいえない. 犬のとおぼえのように,本を書くしかない. なさけない話だが,それが真相なのだろう.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 大学キャリアセンターのぶっちゃけ話@Amazon.co.jp, Kindle 本@Amazon.co.jp.
日本の大学だけでなく,世界の大学の歴史にまでスコープをひろげている. しかし,それが現代日本がかかえている問題とどう関係しているのかは,よくわからない. 知りたいのは現在の大学がどうなっていて,どうするべきかということだが,全体的に議論が抽象的であり,具体的な対策にはつながっていないようにおもう.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: 大学の教育力@Amazon.co.jp.
2006 年に書かれた本だが,「ゆとり教育」 改革がうまくいっていないこと,フィンランドの教育にまなぶべきことがあるが,そのまま日本に導入すればよいわけでないことなどを,対話のなかで語っている.フィンランドの教育については,うすい本のわりにはいろいろおしえられる. しかし,日本の教育をどうすればよいかは,あまりみえてこない.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 欲ばり過ぎるニッポンの教育@Amazon.co.jp.
内容紹介には 「日本初の e ラーニング大学として開学した八洲学園大学」 とあるが,この大学について,それ以上の説明はなにもない. この大学を知らないひとはこの本を買わないだろうということかもしれないが,アマゾンで出版するのだから,ちゃんと説明するべきだろう. しかも,ほんとうに開学するまでしか書いてない. 「日本初の e ラーニング大学として開学した」 と書いたからには,最低限はその結果について書くべきだろう.
もうひとつ,本の体裁に関することを書いておこう. この本には一応,目次らしきものがある. しかし,Kindle 本の構造としては目次がないので,メニューから目次をアクセスしようとしてもできない. 本の構造はきちんとつくってほしい.
評価: ★☆☆☆☆
関連リンク: 開学日記@Amazon.co.jp.
「学問をきわめる」 という感じの従来のこの種の本とくらべると,より現代 (すでに現在ではないが) の大学の状況に即していて,斬新だ. しかし,この本を読んでも 「何を学ぶ」 べきかはみえてこないようにおもえる. 饒舌だが内容はうすい.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 大学で何を学ぶか@Amazon.co.jp.
1960 年代に出版された,研究をする場所としての大学でまなぶべきことに関する本だ. 現在でも研究中心の大学をめざすひととくに文科系のひとには刺激的な内容だとおもえる. 生い立ちなど,著者の経験にもとづいて書かれているから,現在の環境とはまったくちがう. しかし,学問・研究の普遍的な部分をとらえているといえるだろう. しかし,研究者をめざすのではない多数の大学生にとっては,めざすものもちがうし時代もちがうから,えるものはすくないかもしれない.
評価: ★★★★☆
関連リンク: 大学でいかに学ぶか@Amazon.co.jp.
講義・教師や読書だけでなく,大学生活全般についての (全般からまなぶ) 本だ. この本に書いてあるように,まなべるもの,まなべることは何からでもまなぶのがよいだろう. しかし,もうすこしコアの部分があるのではないかとおもえる.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 大学で何を学ぶか@Amazon.co.jp.
「《大学で》すべきこと」 ではなくて 「《大学時代に》すべきこと」 というのがミソなのだろう. 勉強法も書いてあるが,ノートはこまかく書けば書くほどよいというような,首をかしげるようなことが書いてあるだけだ. むしろこの本の読むべきところは人間関係・恋愛などに関する部分かもしれない. しかし,たいていの内容はとくに 「大学時代」 に限定されることではない. 大学生活のマニュアルにはならないだろう.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: 大学時代にすべきこと@Amazon.co.jp.
著者は科学史的な観点からこの本を書いているようだ. 学問には普遍的な部分があり,それをよく解説している. しかし,著者はこの本の執筆時点でも大学でおしえていたようなのだが,とても現代の大学や学問の状況を把握しているとはおもえない. たとえば,コンピュータ科学が成熟した時代なのに 「コンピュータ技術のように数年にしてすっかり陳腐化してしまう」 というような表現をつかっている. だから,これから大学生になるひとにとって,この本は骨董品であって実用品ではない.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: 大学生になるきみへ@Amazon.co.jp.
この本は,まえがきを読むと一応これから大学に行こうとしているひと,とくにわかいひとを対象としてかんがえているらしい. しかし,読んでみると対象あるいはねらいがわからなくなってくる. 最初にはバリバリの研究者の文があり,これから大学にいくおおくのひとには関係なさそうだ. あとのほうには,わかいとき大学にいかないことを選択したひとの話や障碍者の話などがある. それも教養として意味があるとおもうが,これから大学にいこうとしているふつうのひとにとって重要な話だろうか?
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: 大学活用法@Amazon.co.jp.
高校の授業・勉強から部活動,環境,人間関係など,さまざまなことに関して,非常に常識的かつ古典的なアドバイスがしめされている. ときにはステレオタイプだとおもえる内容もある. ひととおりのことを知るには便利だろう. しかし,これだけで現代の高校生活がおくれるということにはならないだろう.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 高校生活100のアドバイス@Amazon.co.jp.
出版されてから 30 年以上たつ本であり,その間,ずっと大学をふくむ教育改革の必要性が指摘され,部分的には実践されてきた. しかし,それにもかかわらず,この本に書かれていることの大半は現在の大学にもあてはまる. いかに改革がすすんでいないかがわかる.
だから,この本はいまの大学でもやくにたつだろう. しかし,そういう大学にそのままみとめてしまうのではなくて,読者にはそれを改革するべきものとして読んでほしいとおもう.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 大学でなにを学ぶか@Amazon.co.jp.
東大をめざすかどうかはともかくとして,文句なくおもしろい. この本の重要な点は,著者がやったことそのものではない. くれぐれも著者がやったことそのものをまねしないほうがよい. そうではなくて,著者の態度,自分でくふうすること,自分でかんがえること,それをまなぶべきだろう.
評価: ★★★★★
関連リンク: 子供を東大に入れる法@Amazon.co.jp.
文科系の大学生にはヒントになる点はあるかもしれない. 読書のすすめはよいかもしれないが,すこしはインターネットをいかしてもよいようにおもう. いつまでも古典的な方法だけでよいということはないだろう. 作文の方法についても書いてあるが,本質をはずしているとしかおもえない. リズムとパンチを強調しているが,それよりまず論理的な文章を書く訓練をしたほうがよいだろう. 文章をたくさん書くことをすすめているが,へたな文章をいくらたくさん書いても,よい文章が書けるようにはならないだろう. あまり真にうけないほうがよい.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: 学問の技法@Amazon.co.jp.
デジタル教科書のさまざまな問題点を検討しているが,できるだけ客観的・中立的な立場をとろうとしている. そのため,賛成派と反対派とがするどく対立しているデジタル教科書に関する本としては,いささか迫力に欠ける.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: デジタル教科書@Amazon.co.jp.
「ヒラノ教授」 をはじめとして架空のなまえもつかわれているが,実名がつかわれているところも多数ある. いままで書かれたことがない工学部の内幕が暴露されている. 大学教授ではないが私も工学系研究者として,工学の研究がどういうものなのか,どういう問題があるのかを知ってもらいたいが,そのために適した本だとおもう.
評価: ★★★★☆
関連リンク: 工学部ヒラノ教授@Amazon.co.jp.
おしろかった 「工学部ヒラノ教授」 から参照されていたので読んでみたが,どこがおもしろいのやら,さっぱりわからない. ヘンなだけだ. だから,1/3 くらいでやめてしまった. 20 年前とはちがって,いまでは大学のヒミツが暴露されてしまっているからなのかもしれない. もしそうだとしたらもはや価値がなくなったということであり,「現代文庫」 なんかにいれるような本ではないだろう.
評価: ★★☆☆☆
関連リンク: 文学部唯野教授@Amazon.co.jp.
著者は大学教授を引退してからこのシリーズを書きつづけているらしい. 1 冊めにくらべるとインパクトがうすくなるのはやむをえないが,それでも工学部におけるいろいろなスキャンダラスなできごとのなかには,新鮮なものもある.
私も教授でなくても日本の大学にかかわっているから,日本の大学でおこっていることはある程度は知っている. しかし,アメリカのことはよく知らないので,ヒラノ教授がアメリカの女学生におそわれたところなどは,いささかショッキングだった.
評価: ★★★☆☆
関連リンク: 工学部ヒラノ教授@Amazon.co.jp.
国際会議に投稿したのとおなじ論文をオープン・アクセス・ジャーナルに投稿しようとして,それらがまったくおなじだとうけいれられないということに気がついた. 従来の (紙の) 論文誌ならゆるされることだとかんがえていたが,WWW で論文がアクセスできるようになった時代には,それとはちがった倫理基準が適用されているようだ.
工学院大学で非常勤講師をしているが,試験は G Suite をつかって遠隔授業・オンラインでやるつもりだ. 問題・答案用紙として Google スプレッドシートをつかって,状況をリアルタイムで把握するつもりだ. 実施前なので成功するかどうかわからないが,その方法を別のブログに書いたので,参考にしてもらえればとおもう.
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