東日本大震災発生以降,それまでも菅首相や政権を批判していた新聞や国会議員などは,さらに批判をつよめている. その理由は会議を乱立させたことや原発事故への対応をはじめ,さまざまだ. 計画停電への対応もそのひとつだ. 政権がさきまわりしてうまく対応していれば,計画停電がさけられたり,影響を最小限にすることができていたとしても,はたしてそうするのがよいことだっただろうか. それが実施され,関東地方の住民におおきな影響をあたえたことが,むしろ住民あるいは国民に事態の深刻さや対策の必要性を学習させたのではないだろうか.
この本の内容はおもに小林よしのりの 「戦争論」 に対する批判だが,小林よしのりや新しい歴史教科書をつくる会に対する批判だけでなく,戦後民主主義や共産党もあわせて批判している. 「従軍慰安婦」 に関しては日本が謝罪し賠償すべきだといっているが,それに関しては十分に納得できる理由がしめされているとはいえない. 憲法 9 条に関しては護憲派であり,それをなしくずしにした 吉田 茂 を批判している. 日航機ハイジャックで福田首相が 「生命は地球よりも重い」 といって人質を解放したことを 「自民党のやった 「一番いいこと」」 だといっているが,これは理解できない.
評価: ★★★☆☆
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主張したいことがあるなら気軽にいこう ! というデモのススメである. 市民が主張し参加するのが民主主義なのだから,日本社会でこういう傾向がひろまるのはよいことなのだろう. ただ,この本の最後にベトナム反戦運動などがとりあげられているところは,ちょっと気になる. 著者がサヨクということではないようなのだが…
評価: ★★★☆☆
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市民がデモに参加して主張するのは,きっと日本の民主主義を発展させるよいことなのだとおもう. それに,デモにかぎらず,行事に参加して経験を積むことはよいことだ. だが,そこでみたこと,きいたことだけを信じてしまうのは危険だろう.
著者はフジテレビが韓流ドラマを他局よりおおく放送し,「反日的」 な報道をしているというので,それに反対する保守派のデモに参加したという. 著者はそういうフジテレビの 「偏向」 を信じているのだろうが,フジ・サンケイ・グループが日本のマスコミのなかでもっとも保守的傾向がつよいことはよく知られている. それを考えると,著者の意見はいささか奇妙におもえる.
この本の読者にも,この本だけでなくて,いろいろな本やほかのメディアをみて判断してもらいたいとおもう.
評価: ★★☆☆☆
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「自由と民主主義をやめる」 という過激なタイトルは 「民主主義」 を卒業するという意味に読める. もしそうであるならば,まず民主主義を理解したうえでなければならないだろう. 民主主義においては最終的には多数決でものごとがきめられるが,その過程では議論が重視され,少数意見を尊重するべきだとされている. しかし,著者はそのことにはふれずに,民主主義では多数の横暴がおこなわれるように書いている. それは 「民主主義国」 において実際におこることだが,理念としての民主主義からははずれている. 著者はそういう民主主義の理念にはふれないまま,議論をすすめていく.
著者は対立する思想として 「左翼」 と 「保守」 をとりあげ,(著者のことばとはちがうが)「左翼」 を理想主義的なもの,「保守」 を現実主義的なものとしている. とすると,上記のような理念を重視するかんがえは 「左翼」 のものであり,著者のような 「保守」 はそれと対立するということになるのだろう. 一応すじはとおっているし現実主義に価値があるのはもちろんだが,民主主義の理想をすてるべき理由はわからない. また,著者は左翼の思想をつきつめるとニヒリズムにいたるという主張をしているが,これも理解することができない.
評価: ★★☆☆☆
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「不思議な仕組み」 と書いているが,民主主義を否定しているわけではない. ギリシャのポリスからはじまり,アメリカの政治制度につづく民主主義の歴史をたどっている. 最後は日本の今後の政治課題につなげているが,具体的な課題の話になると民主主義との関係はぼけてしまっている. 民主主義というものにうたがいをさしはさむ本が何冊か出版されるなかで,この本の位置はよくわからない.
評価: ★★★☆☆
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近年 「民主主義」 に挑戦する本が何冊か出版されているが,この本もそのうちのひとつである. 「民主主義」 がつねによいものではなかった (いかがわしいものだったこともある) というのは著者が書いているとおりだろう. しかし,いくらギリシャのポリスやフランス革命の時代にそれがいかがわしかったとしても,それがよいものとされた歴史がつみかさねられた現在では,それに挑戦するには相当な準備が必要だろう.
著者は 「国民主権」 と 「人権」 という民主主義の基本概念に挑戦しているが,それらをくつがえせるほどの論理が用意されてはいない. 本の内容のわりに 「民主主義とは何なのか」 というなまぬるいタイトルをつけているのも,そこからきているかもしれない. お釈迦様のてのひらのちかくをとびまわっている孫悟空といった感じだ. 民主主義はふところがふかいのだ.
評価: ★★☆☆☆
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杉並の反原発デモ以来,デモというものがみなおされている. この本では日本におけるデモの歴史と当時の政治状況などに関する記述を中心として,アメリカにおける 「オキュパイ・ウォールストリート」 にも目をむける.
しかし,現在の政治状況やそのもとでのデモがもつホットさがこの本からは感じられない. むしろ,ふるくささがただよっている. 過去のデモについても,もうすこし現在の状況からみなおしができなかったものかとおもう.
評価: ★★★☆☆
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鳩山民主党全盛期におこなわれた対話がもとになっているようだ. 予想されるように主導権をにぎっているのは宮台だが,対話の相手である民主党の福山に負けず劣らず民主党にいれこんでいるようだ. しかし,その期待がことごとくはずれてしまったいまこの本を読むと,鳩山首相がそうであったのとおなじように,この本の議論も底の浅さが露呈しているようにおもえる.
評価: ★★★☆☆
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ポピュリズムはものごとを単純化し,ステレオタイプを利用する. だから著者はそれらに対抗する方法をさぐっている. ポビュリズムというとだれもが 小泉 純一郎 をあげる (ステレオタイプ!?) が,著者はそれにくわえて 橋下 徹 や東国原などのなまえもあげている. 政党としては社民党やみんなの党をポピュリズムの手法によっているといい,「事実を無視し,挙行のスローガンをふりま」 いているとまで書いている. その一方で民主党とくに鳩山元首相には好意的だ.
たしかに,ポピュリズムが悪であり反撃するべきものだという観点からはそういうことになるだろう. しかし,政治や政治家を判断するにはその手法だけでなく,経済や社会や,その他もろもろのことをあわせてかんがえる必要がある. この本でもそれをまったくかんがえていないわけではないが,視野狭窄しているという印象をうける. 共感することはできない.
評価: ★★☆☆☆
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著者にとっては,エジプトでムバラク政権がたおされたことが予想外のできごとだった. これまで私はインターネットのおかげでこれまでできなかった革命がおこったと単純にかんがえてきたが,著者によればそれはただしくない. エジプトでは年長者はムバラクに対立していないし,この革命にかならずしも支持していないという. そういう 「断絶」 の存在をこの本はおしえてくれる. 「断絶」 の存在にもかかわらずムスリム同胞団はうまくたちまわったことが書かれている. それが,(この本は選挙よりまえでおわっているが) 今度はかならずしも若者の支持をえていないにもかかわらず,政権獲得につながったのだろう.
評価: ★★★☆☆
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衆議院議員選挙で民主党は惨敗し,日本維新の会と同程度の弱小政党になってしまった. 朝日新聞によればその支持率は 1 桁になっているという. 参議院ではまだ半数にちかい勢力があるが,つぎの選挙では弱小化するだろう. もはや自民党に対抗する勢力になることはないだろう. これは,日本では 2 大政党制そのものが無理だったことを意味しているのではないだろうか.
7 月 16 日の NHK 視点・論点 は 法政大学教授の 白鳥 浩 による,今週末の参議院議員選挙の低投票率をなげく話だった. 若者に政治に興味をもってもらうためのくふうが必要だということを主張していた. 一見もっともな議論だが,よくきいていると常識にこりかたまった議論におもえてきて,だんだん腹がたってきた.
9.11 以来,アメリカでは突然に拉致されて収容所にいれられ拷問されることがしばしばおこっている. それをマスコミもひとびとも見て見ぬふりをしているという. そういうアメリカの異常さは最近の同盟国における盗聴にもあらわれているが,国内問題としておもいだすのは戦前の日本だ. 特高警察に突然つかまって拷問される. 当時とくらべると日本はすっかりかわったとおもっていたが,アメリカではすでに同様のことがおこっている. 日本でも気がつくと同様の状況になっているということは十分おこりうるだろう. これを他山の石として,政治に十分な注意をはらっていく必要があるだろう.
評価: ★★★★☆
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