新書という,かぎられたスペースのなかで,生い立ち,北朝鮮問題や靖国問題もふくむ外交,少子化,教育など,さまざまな問題をとりあげている. そのため,それぞれをきちんと論証するゆとりがなく,誤解するひとがでてくるのはやむをえない. しかし,この文章は,安倍 晋三 という政治家のゆるぎない信念や自信がその行間にまで,つまっている感じがする. 私は著者と同世代といってもよいが,著者とはちがってサヨクにさんざんふりまわされたはてに,いまは外交・教育などについては著者と比較的ちかいかんがえにたどりついたが,著者はその祖父や父の影響もあって,サヨクにふりまわされることなく自分のかんがえをふかめてきている. このストレートさがこれから安倍首相をどちらにみちびいていくのか,期待と不安とをもって,みまもりたい. それから,この本のなかでひとつ私の注意をひいた話は,帝国主義への反動から自虐的な歴史教育がおこなわれたのは日本だけでなくイギリスでもそうであり,サッチャーがそれをかえさせたということである.
評価: ★★★★☆
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日華事変以来,日中の関係はよかったとはいいがたいのですが,小泉政権下で最悪になり,現在も十分回復したとはいえません. その原因としては中国の日本への (あるいは中国人の日本人への) 誤解もあるでしょう. しかし,日本人に欠けているもののひとつは,ながい歴史と文化をもつ中国への敬意ではないかとおもいます.
イラン・イラク戦争がおこった 1985 年 3 月にイランにとりのこされた日本人は,日本の航空会社によってはすくわれませんでした. そのとき救援の飛行機をとばしてくれたのはトルコ航空でした. 危険をおかして救援してくれたのは,1890 年に日本近海でエルトゥールル号が台風にあった (エルトゥールル号遭難事件) とき,日本人の献身的なはたらきでその乗組員のおおくがすくわれたことにむくいたのだといわれています. こうした友好関係はトルコにかぎらず,だいじにしていくべきでしょう.
米国政府は北朝鮮のテロ支援国家指定解除への手続きをすすめている. それが実現すれば北朝鮮の拉致問題解決に関してつかえる重要なカードが 1 枚へってしまうといわれている. これに対して,北朝鮮につけこまれないためには 6 カ国協議の各国の政府が協調することが必要であり,日本の内閣にできることはかぎられているとかんがえられる. しかし,米国でも議会のなかには政府の決定に反対し,テロ支援国家指定解除を阻止しようとするうごきがある (「北朝鮮のテロ支援国家指定 解除停止狙い米下院に法案」 など). 日本でも内閣以外の機関がそれにしばられる必然性はない. 家族会とその支援者がこういうひとびとと協調していくことが,北朝鮮にさらなる圧力をかけていくことになるだろう.
コスタリカは 1948 年に軍隊をなくして 「丸腰」 になった. その歴史・国民性などを分析し,軍隊がなくてもやっていけるのか,ほんとうに軍隊がないのかを検証している.
コスタリカが軍隊なしにやっていけるのは国の規模や米国との関係がうまくいっているからだろう. 米国との関係についてはこの本でも分析しているが,十分とはいえないようにおもえる. また,なぜコスタリカが周辺国とちがうみちをあゆむことができたのかも十分にあきらかにされているとはいえない.
あとがきで非武装化に関して,国の規模・歴史もまったくちがい米国からの物理的距離もまったくちがう日本について 「現状としては日本のほうがはるかに有利な状況にいるはずだ」 と書いているが,これはまったく説得力がない.
評価: ★★☆☆☆
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歴史上の国や地域の状況を想像することは,すくなくとも私にとっては現在の国や地域を想像することよりむずかしい. だから,大東亜戦争当時の中国の状況を現在のアフガニスタンの状況とくらべて理解するようにこころみてみよう.
自民党政権時代には決してあきらかにされることがなかった米軍による核兵器もちこみに関する密約の存在が,民主党政権のもとであきらかにされた.
尖閣諸島沖での衝突事件でつかまっていた中国人船長が突如,釈放された. 検察の判断で釈放したというコメントがだされているが,まったく不可解だ. 海外のメディアは 「日本が白旗」 というような報道をしている. こんな解釈がされるようなことを日本政府はゆるす (する) べきでなかった.
NHK の 「日本人はなぜ戦争へと向かったのか」 第 1 回をみた. これを政府要人や民主党議員にみてほしいとおもう. なぜか? それは,政府内がバラバラだったことが外国の不信をまねき,それが戦争への道につながったという主張をしているからだ. 政府内・党内がバラバラであること,それが現在の民主党政権の現状であり,日本の危機を助長している.
2010 年までの 30 年以上 (?) にわたって外務省につとめてきた著者が,アメリカやアジアとの外交について,率直につづっている. 対米外交に関しては,なりふりかまわない要求をしてくるアメリカにふりまわされ,その要求を値切るのがやっとだった様子が書かれている. また,日本が ODA などによって海外でかさねてきた努力をうまく説明してこなかったことが評価をさげていたが,それをきちんと説明することで 「知らなかった」,「すばらしい」 とすなおにみとめられた経験が紹介されている.
この本にはそれほどあたらしいことが書かれているわけではない. しかし,これまで日本の外交の弱点とされていたことや,そうならざるをえなかった理由などを,実際にその最先端にいたひとのなまなましい筆致で確認することができる. それは,今後の外交をかんがえるうえでの原点になるだろう.
評価: ★★★☆☆
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最近,日中関係が急速に悪化して,政治だけでなく経済への影響が深刻になっている. なぜこうなってしまったのか. 中国側にも原因があるが,最大のまちがいは野田首相が胡錦濤主席と APEC で 15 分間の立ち話をしたことだろう. 今後はこのような稚拙な外交をしないようにするとともに,日中関係正常化のために最善の努力をしてほしい.
日本は 1910 年に朝鮮を併合した. 併合ののち朝鮮人は日本人と平等にあつかわれたとはいえないが,一応は日本人とみなされた. すくなくともたてまえでは平等にあつかうことで単純に植民地化するよりはよいあつかいをしてきたと,これまではかんがえてきた. しかし,最近,そうではないとおもうようになった.
「差別語」 とされていることばのなかにも,あきらかにそういう意図をもってつかわれていることばと,もともとは差別的な意味がないのにそういうニュアンスをおびているものとがある. 「朝鮮人」 ということばは後者だろう. この地域は古代から 「朝鮮」 とよばれ,「朝鮮」 ということばは現在でも誇りをもってつかわれているはずだ. にもかかわらず 「朝鮮人」 ということばは避けなければならない. これはおかしなことであり,改善するべきことだ.
安倍首相がダボス会議で基調講演をおこなった. 一部しかみてはいないが,NHK のテレビでみた印象では,よく練られたプレゼンテーションだと感じた. NHK では基調講演の成功をつたえ,それにくわえて安倍首相の日中問題あるいは戦争の危険に関する話が危惧をあたえていることにふれている. しかし,朝日新聞などのメディアでは基調講演の成功あるいは全般的な印象よりも,日中関係や戦争に関する発言をまずつたえているようにみえる. パランスを欠く報道のしかたなのではないだろうか?
西欧主要国の元首がソチ・オリンピック開会式に欠席するなかで安倍首相はそれに出席し,プーチン大統領と会談した. 開会式にはぎりぎりでまにあったということだが,日本選手団入場のところのテレビを私はみることができなかった. 中国や香港の入場時に習近平が手をふっているすがたがテレビにうつされたのをみていたので,日本の入場時に安倍首相がテレビにうつったのかどうかが気になっていたが,YouTube の 「ソチオリンピック 開会式 日本入場」 をみて,手をふるすがたがうつっていたことがわかって安心した.
先日,アメリカ合衆国駐日大使であるケネディ氏に NHK の番組「クローズアップ現代」 がインタビューしていた. アメリカの安倍首相への失望発言などについてのするどい質問に対して,ケネディ大使はアメリカ本国のスポークスマンとはすこしちがったこたえをしているようにみえた. 来日以来精力的にさまざまな場所をおとずれ,メディアの注目をあびているケネディ大使には,アメリカにはとどかない日本人のこえがいろいろとどいていて,それが慎重な発言につながっているのではないだろうか. 日本人の声をアメリカにつたえる架け橋になってほしいと期待する.
集団的自衛権をみとめる方向に舵がきられた. しかし,反対は根づよい. おおきな政治的転換には慎重であるべきなのはもちろんだが,十分な知識もないまま反対しているひとが多いようにおもえてならない. 彼らは日本の手足をしばることをめざしているようにみえる.
後藤さんらを人質にした ISIL (イスラム国) は日本が「十字軍」に参加したといった. マスコミなどではそれを安部総理の発言とむすびつけたが,それはむしろ集団的自衛権のことをさしていたのではないだろうか? 集団的自衛権をもつときめた政府の意図が ISIL に無関係だったとしても,かれらはそれが自分たちにむけられたと感じたとしてもふしぎではないだろう.
著者は,これまで欧米諸国がイスラムを理解しないまま中東に介入してきたが,そのやりかたが限界に達したことを指摘している. イスラム国に関してもそのテロリズムや情報のだしかたなどに反対しながらも,この問題の理解なしに武力による解決をはかっても成功しないであろうことを指摘している.
イスラムへの深い理解にもとづく著者のこういう主張は貴重なものだが,てばなしでこの本を賞賛しているようにみえるおおくの評者とはちがって,私には釈然としないおもいがのこる. 日本が平和的な手段でのみこの問題にかかわっていくことを著者はもとめているが,自衛権・集団的自衛権の問題は中東・イスラムとの関係だけできめられるものではないし,イスラム国に「宣戦布告」された日本がたたかわない道を選択することが可能なのかどうかもわからない. この本の複雑な論理がおおくの日本人に理解しうるものなのかどうかも疑問だ. しかし,すくなくとも解決するべきおおきな課題をなげかけていることはまちがいない.
評価: ★★★★☆
関連リンク: イスラム戦争.
オバマ大統領の広島訪問は日本ではおおくのひとの感動をもってうけとめられたといってよいだろう. 批判的な意見はすくないようにみえる. サミットの成功とともに,これは外務省の勝利といえるだろう. 2009 年,オバマがノーベル賞をもらった年の洞爺湖サミットのときから日本は広島訪問の打診をうけていたというが,それを日本でのつぎのサミットまで延期することで成功確率をたかめたのだろう.
アメリカはシリアのアサド政権が化学兵器をつかった攻撃をおこなったとして,シリアの軍事基地をミサイル攻撃した. しかし,化学兵器がつかわれた可能性が非常にたかいとしても,それをやったのがシリア軍だという証拠は十分でないようにみえる. 不法に大量破壊兵器を開発したとしてイラクを攻撃したブッシュのやりかたに似ているようにおもう. 「アメリカファースト」のトランプはどこにいったのか?!
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