著者は,ことなる立場にたちつつも真剣に道路公団の民営化にむきあってきた 7 人の民営化委員のうちのひとりだった. 民営化委員のひとりが作家の猪瀬直樹であり,この本のなかで,国交省や道路族と通じていたとしてするどく批判されている. 結局,著者は民営化委員としての立場や委員のあるべきすがたにこだわったのに対して,猪瀬は民営化委員としての立場をこえて (越権して),田中のことばによれば “フィクサー作家” としてぎりぎりまで自分や小泉首相のかんがえを民営化に反映させようとしたことが,両者をこれだけ対立させたのだとかんがえられる. 私には妥協をいとわず最後までたたかった猪瀬の本 「道路の決着」 のほうが迫力があるように感じられる.
評価: ★★★☆☆
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小泉首相が辞任してから,もう 1 年以上がたちました. いまさらという感じはありますが,私の小泉首相に関するかんがえを書いてみようとおもいます. ひとことでいえば,小泉元首相はカリスマをもっていたが,自分でその危険もよく知っていたということです.
きょうの NHK 教育テレビの 「視点・論点」 では建築家の 安藤 忠雄 氏が都市計画について,とくに川をおおう高速道路の撤去に関して論じていました. そのなかでは韓国における成功例とともに日本橋上の高速道路の撤去計画もとりあげられていました. この話をきいておもいだしましたが,私はまだ 小泉 純一郎 が首相をしていた 2006 年に官邸にみじかいメイルをだしました. この時点ですでに計画はうごきだしていたのかもしれませんが,要望をだしておきたいとおもいました. いまさらですが,その内容をここにのせておきます.
小泉内閣で農水相や党幹事長などをつとめ,郵政解散・総選挙でも中心となってはたらいた 武部 勤 が小泉時代をふりかえるとともに,「改革フォーラム 新しい風」 を代表して今後すすめるべき改革について書いている. どちらも書くに値するテーマだとおもうし,わかりやすく書いているともおもうが,1 冊の新書のなかで両方を論じると中途半端になってしまうようにおもう. 民主党を応援するそぶりもみせながら 小沢 一郎 を攻撃するなど,プロパガンダ的な要素もあって,散漫な印象である.
評価: ★★☆☆☆
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小泉首相の時代には非正規労働者を増加させるような政策がとられた. それは,グローバリゼーションのなかで日本企業が活路をみいだせるようにし,日本経済を復活させるために必要だったといえるだろう. しかし,そのとき,非正規労働者に対応できないセーフティネットはそのまま放置されていた. その結果,いま,急速な景気悪化とともに,非正規労働者にとってあまりに過酷な状態が発生している. 非正規雇用の増大とあわせて,セーテフィネットが非正規労働者にあわせて改革されていれば,これほどひどいことにはならなかっただろう.
新自由主義に席巻されたアメリカの経済学を信奉してきた著者が,そういう過去を自己批判する. 最近はつよく批判される小泉政権の政策については,郵政民営化で公共事業に自動的に資金がながれるしくみにくさびをうった点を評価しながらも,いなかの特定郵便局まで民営化して採算重視することへの疑問をのべている.
しかし,著者の議論はそれだけにとどまらない. 格差や貧困ををうみだし環境を破壊する近年のグローバル資本主義を批判するだけでなく,一神教であるキリスト教にささえられた米英の資本主義や土地の私有制などにもメスがいれられる. その一方でグローバル資本主義を拒否したブータンとキューバに羨望の目がむけられる. また,自然との共生を重視してきた日本人の思想をみなおし,「商人道」 から発した日本の商慣習を評価し,日本の自動車産業の成功の理由をそういうところにみている. また,日本 「再生」 のためにも,さまざまな提言をしている.
しかし,その一方で,批判した資本主義を 「歴史を逆行させることはおそらくできないだろう」 というように,かんたんにみとめてしまっている. 資本主義のルーツにまでさかのぼった議論をするのであれば,改良主義的な提言よりも,もっと根本的なみなおしの議論がほしかったようにおもう.
評価: ★★★☆☆
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小泉政権下でずっと重要な位置をしめていた竹中平蔵が金融担当大臣だった時代をふりかえっている. 郵政民営化や道路財源に関する 「戦争」 に関してはおおくの文章があり,1 冊ならず読んでいたが,りそな,UFJ,ダイエーなどに関するいきさつは,よく知らなかった. 本書はそこで水面下でおこなわれていた熾烈なたたかいをあきらかにしてくれる.
評価: ★★★☆☆
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小泉政権下での竹中大臣のさまざまな挑戦を挑戦者自身がえがいている. 個々の問題をもっとくわしくあつかった本はほかにあるが,金融改革,郵政民営化,政策プロセスの改革など,全部をとおしてみるにはこの本を読むのがよいだろう. 竹中大臣がただしかったかどかはより客観的にみる必要があるだろうが,彼自身がなにをかんがえ,なにをやってきたかを知ることができる.
(実名はあまり書いてないが) 批判されているひとがおおいなかで,北朝鮮訪問もふくめて,小泉首相には最大限の賛辞が書かれている. また,自民党税調のドンといわれた」山中貞則に対して 「政界のドンと言われる人の志の大きさと人間の奥深さを,様々な形で学ばせてもらった」 というのも興味ぶかい.
評価: ★★★☆☆
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タイトルをみて,おもわず買ってしまった. しかし,この話題は最初の 20 ページくらいをしめているだけである. 著者は権力者にはありとあらゆる罵詈雑言をあびせるが同士にはやさしい. それは単に敵と味方をくべつして敵だけを攻撃しているようにしかみえない. 彼自身にはそこに論理があるのかもしれないが,それがこの浅薄な文章からは読者に十分にはつたわってこない.
評価: ★★☆☆☆
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「パトスの首相」,「強い首相」 という観点から小泉元首相の政治手法を分析し,内政,外交をそれぞれ分析している. そのうえで日本の政治のながれを 「利益の政治」 と 「アイディアの政治」 の対立という視座からとらえて,小泉が 「アイディアの政治」 を復活させ,日本の政治をおおきくかえたとしている. しかし,「アイディアの政治」 の意味が十分説明されていないので中途半端になっている.
「あとがき」 で著者は過小評価していた小泉首相を 2005 年の総選挙以降,注目するようになったということを書いている. この選挙の結果として郵政民営化が実現したのは事実だが,それ以外ではむしろ徐々にちからをぬいていっていたように私は感じていたので,違和感があった.
評価: ★★★☆☆
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自民党も社会党・社民党もソ連型社会主義が崩壊した 1980 年代にやくわりをおえた,かわらなければならないと主張する. ところが,著者は自民党をかえようとした小泉・竹中の政治をするどく批判する. 彼らは 「日本というシステム」 を破壊し,地域コミュニティを崩壊させたという.
社会主義の崩壊に言及し,「新自由主義」 とアメリカ発の 「グローバリゼーション」 を批判してはいるが,著者の視点はほとんど日本のなかにとどまっている. 地域コミュニティや日本の農業など,国内にもっと目をむけるべきであることはたしかだろう. しかし,「新自由主義」 が失敗したからといって 「グローバリゼーション」 もどこかにきえてしまうわけではないだろう. 中国やインドが台頭し,BRICS など,それにつづく国々もあることをわすれた経済政策をたてても,日本をたてなおすことはできないだろう. 視野のせまい,あぶない議論だとおもう.
評価: ★★☆☆☆
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後期高齢者医療制度は小泉政権下でつくられたはずなのに,いまになっておおさわぎしている. どうしてそういうことになったのか,本書はそのいきさつをあきらかにしている. 重大な制度改革なのだからちゃんと国民的な議論をするべきなのに,しなかった. そのツケをいま自民党ははらわなければならないということなのだろう.
評価: ★★★☆☆
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小泉郵政改革に反対する立場の議論である. 郵政や道路公団の民営化だけでなく,国鉄,電電公社,専売公社の民営化も批判的に再検討している. これら三公社の民営化に関しては累積赤字のツケを国民にまわしたことを批判している. しかし,そうしないで公社のままだったら,さらに累積赤字がつみかさなって,もっとひどいことになっていたのではないだろうか? これらの民営化に関する論点を提供している点では価値があるが,読者もこの本を批判的によむべきだろう.
評価: ★★★☆☆
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日本経済をよくするにはまず経済をきちんと理解して経済・財政のウソを見抜くこと,そして経済だけでなく原子力などでも専門知識にもとづいた議論が必要だと主張している. 著者が憂いていることのひとつはリーダーシップの不足だが,専門家をあつめて明確な目標をあたえ,たばねていくのが政治的なリーダーシップということだろう.
著者は,まずデフレを克服することが重要だが,いまだにそれができないのはまちがった政策のためであること,増税はデフレをながびかせることを主張している. 小泉政権時代の政策のただしさを主張するためにもかなりのページをさいているが,これは著者のこれまでの本にも書いていることであり,ちょっと鼻につく.
評価: ★★★★☆
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この本は小泉政権のころのものであり,田中 真紀子 外相更迭にがっかりしたことなどが書かれている. 庶民的な感覚だ. 昭和天皇を評価するひとは多いが,この本で吉本も 「昭和天皇というのは天智天皇と並ぶ大皇帝であったとおもう」 と書いている. 著者は過去に書いたまちがいをすなおにみとめつつ,現在 (2002 年) については他人に影響されず大胆に,しかしたぶん慎重に,発言している. そのなかには 「脳死は人の死ではない」 という発言もある. メディアはもちろん,「常識的な」 ことしか書かないおおくの評論家などとは一線を画している.
評価: ★★★★☆
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著者は官僚だったから,そうでなければ書けないこと,とくに小泉内閣・第一次安倍内閣時代の彼の仕事,竹中平蔵との関係・やりとりなど,おもしろい話がいろいろある. 技術のわからない官僚のなかにあって,IT を理解し郵政改革では SE と対決した話もおもしろい. しかし,自慢話っぽくて,どこまで信じていいかわからないようなところもある.
評価: ★★★☆☆
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