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QoS 保証

DiffServ

ここでは IntServ にかわるべきスケーラブルな方法として IETF において提案された DiffServ (Differentiated Services, 差別化サービス) についてのべる. DiffServ は IntServ のようなフローごとでなくクラスごとにネットワーク資源を配分することによって QoS を確保するためのサービス・アーキテクチャである.

1. DiffServ の概要

DiffServ (Differentiated Services) [Nic 98] [Car 98] [Li 98] [Gro 02] は IntServ のようにフローごとに QoS 保証をおこなうのでなく,複数のフローを集約して (aggregate して) 数個程度のクラスをつくり,クラスごとに優先度や帯域わりあてをきめて QoS アルゴリズムをくみあわせて適用する方法である. たとえば,ユーザをサービス契約 (SLA) において金,銀,銅というようなクラスにわけ,金を最優先し,銀,銅がこの順にそれにつづくようにする.

DiffServ においては,ユーザが通信に使用するルータなどのネットワーク機器に対して,あらかじめ,またはユーザの要求時にこのようなサービスを実現するための設定をおこなう. すなわち,ネットワークの入口のルータ (エッジルータ) においてそこに到達したパケットをユーザのクラスなどにもとづいて分類し,そのパケットに DSCP (DiffServ CodePoint) というデータを書き込んでマークする. IP パケットにはこのマーキングのためのフィールド (DS フィールド) が確保されている. クラスわけのためにはクラシファイアを使用する.

ネットワーク中の各ルータ (コアルータ) はこのマークを識別し,DSCP の値によってそのパケットごとにポリシング,シェイピング,キューイングなどの動作をきめる. たとえば,金クラスのパケットは高優先度のキューにいれるというような動作をする. このようなルータの動作はポリシーサーバによってきめられる.

DiffServ におけるルータと管理系の動作概念を 図??? に示す. DiffServ においては同一クラスに属する複数のフローのあいだでの公平性がかならずしも確保されないという問題点はあるものの,IntServ とちがってフローごとの制御が必要ないためスケーラブルであり,またフローごとに資源をわりあてる IntServ にくらべて資源を効率的に使用することができるため,大規模ネットワークもふくめてよりひろい範囲で使用されている.

2. Per-Hop Behavior

DiffServ における 1 台のコアノードによる転送処理を Per-Hop Behavior (PHB) という. PHB ごとに,そのために使用する DSCP の値がきめられている [Nic 98]

標準化された PHB として,つぎの 4 種類がある.

Expandited Forwarding PHB (EF)
端点間の帯域保証をおこなう仮想専用線サービスのための PHB である [Dav 02] [Cha 02] [Arm 02]. DiffServ ネットワークのエッジにおいて契約分のみのトラフィックを通過させ,コアにおいては契約分の総和をうわまわる帯域を確保する (over-provision する). コアノードでは,優先キューイングを用いてトラフィックを制御する. EF においては 1 個だけの DSCP を使用する.
Assured Forwarding PHBs (AF)
EF よりゆるい保証サービス,すなわち最低帯域保証つきのベストエフォート・サービスのための PHB である [Hei 99].DiffServ ネットワークのエッジにおいて契約分をこえたトラフィックにマークをつけ,コアノードが混雑した場合にはマークがついたパケットを優先的に破棄する. AF のためには AF1 ~ AF4 という 4 つのクラスが標準化されているが,各 AF クラスは 3 個の DSCP を使用する. したがって,DSCP の値としては AF11 ~ AF41 という 12 個が使用される.
Default Forwarding PHB (DF)
最小限の資源をわりあてる条件があることを除いて,ベストエフォートを意味する [Nic 98]. Best Effort PHB (BE) とよばれることもある. DF のための DSCP は 0 (だけ) である.
Class Selecor PHB (CS)
Cisco が実装している IP precedence を使用する QoS 保証法と互換性のある PHB である [Nic 98]. CS のためには 8 個の DSCP がわりあてられている.

DiffServ においては,計測の結果として違反がみつかれば,いったんマーキングされたパケットに対して優先度がひくいべつのマークにつけかえる処理をおこなうばあいがある. このような処理をリマーキングという.

静的なサービスと動的なサービス

DiffServ を固定的なサービスとして実施するのであれば,各ユーザとネットワーク・オペレータ (ISP,キャリアなど) とのあいだであらかじめサービスレベル合意 (SLA) をむすび,それにしたがってネットワークを固定的に設定しておけばよい. しかし,ユーザの要求はときによって変化するから,そのつど必要なサービスレベル仕様 (SLS) を指定できるほうがネットワークをより柔軟に利用することができる. このようにユーザが動的に SLS を指定する相手を帯域ブローカ (Bandwidth Broker) という [Tei 99] [Soh 02]. 帯域ブローカはネットワーク資源を管理し,アドミッション制御をおこなう. 帯域ブローカへの資源要求のためのプロトコルとして RSVP を使用することもできるが,COPS などのプロトコルによって帯域ブローカに直接要求することもできる. 帯域ブローカは,高速な研究・教育用のネットワーク最先端技術を開発してきた Internet2 プロジェクト [Soh 02] などで研究されてきた.

このような DiffServ のための資源管理の方法として,Westberg, Karagiannis ら [Wes 02] [Jac 02] [Kar 04] [Bad 06] は RMD (Resource Management in DiffServ) を提案し,RMD を QoS-NSLP によって実現するために,QoS-NSLP のための QoS 仕様記述法 (QSPEC) のひとつとして RMD-QOSM [Bad 06] を提案している. RMD においてはシグナリング方式として RSVP のようなフロー・パスにそうものだけをかんがえているわけではないが,フロー・パスにそったシグナリングを中心として検討しているので,RMD は IntServ と DiffServ とのくみあわせだとかんがえることができる.

関連項目

参考文献

  • [Arm 02] Armitage, G., Carpenter, B., Casati, A., Crowcroft, J., Halpern, J., Kumar, B., and Schnizlein, J., “A Delay Bound Alternative Revision of RFC 2598”, RFC 3248, IETF, March 2002.
  • [Bad 06] Báder, A., Westberg, L, Karagiannis, G., Kappler, C., and Phelan, T., “RMD-QOSM - The Resource Management in DiffServ QOS Model”, draft-ietf-nsis-rmd-07, Internet Draft, IETF, June 2006.
  • [Car 98] Carlson, M., Weiss, W., Blake, S., Wang, Z., Black, D., and Davies, E., “An Architecture for Differentiated Services”, RFC 2475, IETF, December 1998.
  • [Cha 02] Charny, A., Bennett, J. C.R., Benson, K., Le Boudec, J. Y., Chiu, A., Courtney, W., Davari, S., Firoiu, V., Kalmanek, C., and Ramakrishnan, K. K., “Supplemental Information for the New Definition of the EF PHB (Expedited Forwarding Per-Hop Behavior)”, RFC 3247, IETF, March 2002.
  • [Dav 02] Davie, B., Charny, A., Bennett, J. C. R., Benson, K., Le Boudec, J. Y., Courtney, W., Davari, S., Firoiu, V., and Stiliadis, D., “An Expedited Forwarding PHB (Per-Hop Behavior)”, RFC 3246, IETF, March 2002
  • [Gro 02] Grossman, D., “New Terminology and Clarifications for DiffServ”, RFC 3260, IETF, April 2002.
  • [Hei 99] Heinanen, J., Baker, F., Weiss, W., and Wroclawski, J., “Assured Forwarding PHB Group”, RFC 2597, IETF, June 1999.
  • [Jac 02] Jacobsson, M., Oosthoek, S., and Karagiannis, G., “Resource Management in Differentiated Services: A Prototype Implementation”, 7th Int'l Symposium on Computers and Commu-nications (ISCC 2002), pp. 21–28, July 2002.
  • [Kar 04] Karagiannis, G., Bader, A., Pongracz, G., Csaszar, A., Takacs, A., Szabo, R., and Westberg, S. L., “RMD-a lightweight application of NSIS”, 11th Int'l Telecommunications Network Strategy and Planning Symposium (NETWORKS 2004), pp. 211–216, June 2004.
  • [Li 98] Li, T. and Y. Rekhter, “A Provider Architecture for Differentiated Services and Traffic Engi-neering (PASTE)”, RFC 2430, IETF, October 1998.
  • [Nic 98] Nichols, K., Sblake, S., Baker, F., and Black, D., “Definition of the Differentiated Services Field (DS Field) in the IPv4 and IPv6 Headers”, RFC 2474, December 1998.
  • [Soh 02] Sohail, S. and Jha, S., “The Survey of Bandwidth Broker”, Technical Report UNSQ-CSE-TR-0206, University of New South Wales, Sydney, Australia, May 2002.
  • [Tei 99] Teitelbaum, B. and Geib, R., “Internet2 QBone: A Test Bed for Differentiated Service”, INET'99, June 1999.
  • [Wes 02] Westberg, L, Csaszar, A., Karagiannis, G., Marquetant, A., Partain, D., Pop, O., Rexhepi, V., Szabo, R., and Takacs, A., “Resource management in DiffServ (RMD): A Functionality and Performance Behavior Overview”, 7th IFIP/IEEE Workshop on Protocols for High-Speed Networks (PfHSN'2002).
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