コンピュータやロボットは人間にとってどういう存在であるべきなのでしょうか? 人間にできない部分をおぎなうことによって,よりよい仕事ができるようにするのがよいのでしょうか? それとも,従来は人間がやってきた仕事を人間にかわってやることによって,人間が楽になるようにするのがよいのでしょうか?
「ユビキタス・コンピューティングとエージェント指向コンピューティング」 においてコンピュータと人間との 2 種類の関係についてのべましたが,人間をおぎなうかんがえかたがユビキタス・コンピューティングであり,人間にかわるかんがえかたがエージェント指向コンピューティングだということができます.
これらのかんがえかたのうちのどちらをとったほうがよいかは,ときとばあいによります. しかし,私自身は基本的なかんがえかたとして,コンピュータには人間ができないことをやらせるべきだとかんがえています. これに対して,私がこれまで話をしてきたおおくのロボット研究者はロボットに人間とおなじように仕事をさせた,あるいは人間ができる仕事をよりよくやらせたいとかんがえていました. 人工知能や認知心理学のおおきな目標として人間の知的な能力を解明することがあるので,その実現のためにはこのようなアプローチがよいでしょう. しかし,工学者である私にとっては人間が不得意な部分をコンピュータやロボットにやらせることによって,全体としてよりよく仕事ができるようにすることが目標でした.
こうしたかんがえかたが軸づけ検索や voiscape の研究にどのように反映されたかについては 「ユビキタス・コンピューティングとエージェント指向コンピューティング」 に書いたので,ここではくりかえしません.
2007-10-11 追記:
「人間にできない部分をおぎなうコンピュータ」 は,同時に 「人間の能力をひきだすコンピュータ」 であるべきです.
つまり,人間ができる部分は人間がやるようにするわけなので,そこを人間がうまくやれるようにしないと,ボトルネックになってしまいます.
人間がやる部分についてもできるだけ人間をたすけることによって,パフォーマンスを最大化することができます.