音声による自然な遠隔コミュニケーションのためには,従来の電話の受話器のように片耳できくのではなく,両耳をつかう必要があると私はかんがえてきました (「仮想の “音の部屋” によるコミュニケーション・メディア voiscape」 (PDF ファイル)). いまのところ,両耳をつかって遠隔会話をする環境はととのっていませんが,最近,携帯電話にはそこにつながっていくと期待される変化がいろいろおこっています.
私は,両耳をつかった遠隔コミュニケーションのためのメディアとして voiscape (ヴォイスケープ) を提案してきました. voiscape ではバイノーラル (両耳用) ヘッドセットをつかいます. 両耳をつかってプライベートな会話をするにはそれが必要だからです. 遠隔会話の場面でのヘッドセットの使用を実現するためには,マイクに関してもいろいろ問題はありますが,まず電話で音をきくのにヘッドフォンないしイヤフォンをつかってもらう必要があります. 近年は携帯電話にイヤフォンをつけて音楽をきくひともでてきているので,これがすすめば voiscape のようなメディアがつかわれる可能性がでてくるとかんがえていました. しかし,最近,携帯電話に音楽をダウンロードするひとがふえているといっても,その対象はほとんどは 着うた であり,たぶん本気で音楽をきくひとは iPod (アイポッド) のようなデバイスをつかうのだとおもわれます. そういう意味では Apple (アップル) の iPhone (アイフォーン) の登場はこの方向での強力な 1 歩だということができます.
しかし,だれもがモバイルな環境で音楽をききたいとはおもうわけではありません. モバイルな環境で音楽をきくことには興味がないがテレビやビデオならみたいというひともいるでしょう. ワンセグつきの携帯電話やビデオ機能つきの iPod (や iPhone) はこういうひとのためのデバイスです. 江口 靖二 は 「本放送間近、電車でTV 試して分かった課題 ワンセグ: その1」 のなかでつぎのように書いています.
「テレビの視聴には音声が不可欠だ. これはそれまでのケータイにはなかったことだ. 実際の使用状況ではスピーカーから音を出すことが非常に困難であるために,ヘッドホンを使用する必要がある. このヘッドホンはケータイではまだなじみがない.」
つまり,障害はあるものの,携帯電話で動画再生をすることはヘッドフォンをつかう動機になるということです. こうやって,両耳をつかった遠隔コミュニケーションが実現されるべき条件が徐々にととのってきているのではないでしょうか?