ここ数年のあいだに,生活保護をうちきられて,ついには餓死にいたるという事件がときどき発生しています. 生活保護の予算が削減されていることが背景にありますが,はたしてそれだけの問題なのでしょうか? 「福祉」 というものの本質がみうしなわれた結果なのではないでしょうか?
「発達障碍者と非発達障碍者の共存をめざして: ご参考までに 餓死 11 年で 867 人」 によると,日本での餓死者は 1995 年をさかいに急増し,それ以降は毎年 100 人ちかく発生しているということです. そのすべてではないでしょうが,おおくは,すくなくとも潜在的には生活保護と関係があるのではないでしょうか?
予算が潤沢にあるときは,予算をだれに配分すればよいのかをそれほどきびしく査定する必要はありません. みんなに配分すればよいのですから. しかし,予算がかぎられれば,どのように配分するかを慎重に判断する必要がでてきます. その際の基準としてはもちろん,労働可能な肉体や能力をもっているかというような,客観的な基準もあるでしょう. しかし,福祉というのはそれをうけるひとが幸福になることをめざすものです. 幸福というのは主観的なものですから,福祉政策においては対象者の主観にも配慮しなければなりません. 生活保護の申請者が客観的にみて労働可能な状態にあるからといって,ただちに受給を拒否することが,不幸な事件をおこしているのだとおもわれます.
福祉行政の担当者が福祉の本質を理解していない,それでも潤沢に予算があるときはなんとかなっていたものが,いまや破綻してしまったということなのではないでしょうか? もう一度,福祉の原点にかえって,担当者を再教育するなどの措置が必要なようにおもわれます.
2007-11-11 追記:
生活保護うちきりによる餓死の問題については NHK の 「クローズアップ現代」 という番組でもとりあげられました.
この番組については 「NHK 「クローズアップ現代」 で,餓死 (生活保護) 問題を放送」 でもとりあげられています.
2008-5-11 追記:
生活保護うちきりによって発生する問題のなかで飢餓はもっとも深刻な問題ですが,もちろん,そこから発生してくる問題は飢餓だけではありません.
きょうの NHK スペシャル 「セーフティーネット・クライシス ~ 日本の社会保障が危ない~」 では病気で仕事がおもうようにできないひとが生活保護うちきりで鞭打たれる様子や,おもうように医療がうけられないこと,進学できないことなどがとりあげられていました.
また,生活保護だけでなくセーフティ・ネット全体がテーマなので,健康保険や介護保険の問題もとりあげられていました.
関連項目 (2008-9-27):