「ヨーロッパ型にちかづけるべき日本の福祉政策」 という項目では,生活保護の予算が削減されるとともに自立可能なひとには自立をうながすという方針がたてられたことが原因で問題がおこっていることについて書きました. 生活保護をうけるひとはいわば競争社会の敗者ですが,公正な社会の実現のためには,すくなくとも敗者やその家族がいつまでも敗者の立場にあまんじなければならないことを避けなければなりません. そのためには 「機会の平等」 を確保する必要があります. ところが,現在,現場でおこっていることは 「機会の平等」 が確保されるまえに無理に自立をうながしているために,機会が不平等なまま,いつまでも底辺からぬけだせないでいるひとがおおいということだとおもえます.
生活保護をうけざるをえなくなったひとが再起するためには,生活をたてなおして,ふたたび競争社会にたちむかえるようにしなければなりません. 精神的・肉体的に病的な状態にあればそれを治療する必要があります. また,教育が必要であれば,まずそれをうける必要があります. それらが中途半端なまま競争社会にほうりだせば,また,おなじことをくりかえすだけです.
実際,「生活保護うちきりからくる餓死・飢餓 ― 福祉の本質をわすれた地方自治体」 の追記でとりあげた NHK の番組では,ふたたび生活保護をうけなければならなかったひとがとりあげられています. しかも,かんたんにはそこにもどれず,生活保護を回復するために NPO の支援が必要だったということです.
「機会の平等」 はヨーロッパ型の社会だけでなく,なんらかの意味で平等な社会をめざすかぎり,仮にアメリカ型の社会をめざすのであっても必要なことです. 予算の削減を理由にしてそれを破壊することは絶対にやめなければなりません.
関連項目 (2008-9-27):