岩村暢子の 「普通の家族がいちばん怖い」 (新潮社) という本に,最近の親はこどもが中学生になっても高校生になってもサンタクロースからのプレゼントをつづけるという話が書いてありました. 今年もクリスマスがちかづいてきましたが,この話を読んで,昨年のクリスマスのころに小学生のこどもからサンタクロースについてきかれたことをおもいだしました. こういう質問をうけたとき,私はサンタクロースを生物学的な存在としてではなく,文化論的な存在としてこたえるようにしています.
こどもの質問のひとつは,「うちには煙突もないし鍵がかかっているのに,どうしてサンタクロースははいれるの?」 というものです. 私のこたえは,サンタクロースには協力者がいるから,鍵をこわしたりしなくてもはいれるということでした. 「サンタクロースはどうしてひとりで一夜のあいだに世界中にプレゼンとをくばれるの?」 という質問もありました. これに対するこたえも,協力するひとがたくさんいるから,というものでした. 実際にはもうすこしていねいに説明したはずなのですが,どうやら,いずれの質問のこたえも,こどもにはよく理解できないようでした. もっと具体的にこたえれば理解できるでしょうが,それでは身もふたもないようにおもえます.
サンタクロースは実在した人物だときいていますが,生物学的・実在論的には現在までいきられるはずはありません. しかし,文化論的には毎年,世界中のこどもにおくりものをしつづけています. 「サンタクロースはいない」 という “科学的” なこたえは適切ではないと私はおもいます.