第 1 次産業革命によってスキルを必要としなくなった資本主義社会は低賃金と長時間労働をうみだしました. こうした状況をマルクスは 「窮乏化」 ということばで表現しました. 原因はちがいますが現代の労働市場においても非正規雇用による低賃金と,正規・非正規をとわず長時間労働がひろがっています. にもかかわらず,「窮乏化」 をはじめとして,こういう現在の状況を社会主義の理論にあてはめる,あるいはアナロジーをこころみる議論は,あまりみあたりません. 過去の議論が現在の状況にそのままあてはまるわけではありませんが,もういちど,社会主義,マルクスなどをおもいだしてみてもよいのではないでしょうか?
1990 年代以降,企業はグローバルな競争にさらされて,コストをぎりぎりにきりつめる必要にせまられてきました. そのなかで,1999 年の労働者派遣法改正などもてつだって,非正規雇用が拡大するとともに,その賃金はしだいにきりさげられてきました.
既存の労働組合は非正規雇用者を組織するものではないので,こうした非正規雇用がうみだす問題の解決にはほとんど無力です. そのため,非正規雇用者が連帯して労働組合をつくるうごきがひろがっています.
こうした状況はかつて資本主義社会が経験してきた状況ににているところがあり,かつてつかわれたことばをもう一度そこにあてはめてみることが有効であるようにおもわれます. にもかかわらず,すでに社会主義は死にたえて,その用語もわすれさられているようにおもいます. Google で 「窮乏化」 ということばを検索しても,すぐには,それを現代の非正規雇用労働者とむすびつけている議論は 「ネオ窮乏化論」 (みんななかよく) くらいしか,みつかりません.
過去の議論が現在の状況にそのままあてはまるわけではありませんが,もういちど,社会主義,マルクスなどをおもいだしてみてもよいのではないでしょうか?
2008-5-18 追記:
きょうの朝日新聞には,生まれが 50 年代,60 年代,70 年代の 3 人の主張を中心とした,非正規雇用問題と社会主義との関係を議論するページがありました (「耕論」).
(さすが朝日新聞!?:-)
非正規雇用者による労働運動にくわえて,最近,小林 多喜二 の 「蟹工船」 が読まれていることが紹介されていました.
神奈川大教授の 的場 昭弘 の寄稿のなかでは,彼が 「超訳 『資本論』」 という本のなかで 「マルクスに立ち返って考え」 ることを主張していることなどが書かれていました.
ただし,この記事を読むかぎりではこれはマルクス主義の単純なリバイバルであって,現代の問題をうまくとらえられているようにはみえませんでした.
関連項目 (2008-8-9 追記):