村山 涼一 著 「論理的に考える技術」 は論理的にかんがえるための訓練として,文章を読んだり書いたりするときにその内容を図形化 (視覚化) してみることをすすめています. 論理を重視する文章においてはこういうやりかたをとるのはもっともだとおもいます (とはいえ,私自身はかならずしも同意しません) が,この本においてはおなじやりかたを小説や童話を書くのにも適用しようとしています. これは,さすがに,ワルノリといってよいでしょう.
この本では小説をかくときにその内容を図形化してかくことをためしています. もちろん,小説の文章にも論理はあります. それを図形化することはもちろん可能です. しかし,科学論文のような論理的な文章と小説のような文学的な文章とのあいだにはおおきなちがいがあります. それは,論理的な文章においては理解を容易にするためにできるだけ論理を単純明晰にする必要があるのに対して,文学的な文章においては論理ではとらえられない細部 (つまりレトリック) にそのいのちがあるからです. 図形化することはむしろそういう重要な細部をみえなくしてしまう危険があるとおもいます.
キーワード: 図形化, ビジュアル化, ヴィジュアル化, 視覚化