ウィキペディアには 「ペディア」 つまり百科事典ということばがついている. それは百科事典を意図してつくられ,そのなまえもあって世間でも百科事典だとかんがえられている. しかし,「ウィキペディアをめぐる教育現場の混乱からの脱出のために ― ピエール・アスリーヌ 著 「ウィキペディア革命 ― そこで何が起きているのか?」」 という項目に書いたように,百科事典はリファレンスつまり常に同一のものが参照できるものであるのに対して,ウィキペディアはそうでない. つまりはウィキペディアは百科事典ではないのである. ここに誤解がなければウィキペディアをめぐる混乱のおおくは解消されるとかんがえられる.
ウィキペディアは WikiWikiWeb である,つまり,いつでもだれでもかきかえられるというのが基本である. それはリファレンスとはあいいれない属性である. リファレンスではないのだから,基本的に 「参考文献」 としてはつかえない. 私自身,これまで大学の講義などでウィキペディアのことを百科事典として紹介してきたが,これはかんがえなおさなければならない.
ウィキペディアは特定のことがらに関する知識をえるのに非常に有用なものであることはまちがいないが,そこからえた知識を利用するときは,ウラをとる,つまりそのことが書いてある他の文献や Web ページなどをさがして信頼性を確認する必要がある. さらに,正確さがもとめられるとき,きちんと参照できるかたちで利用するとき (参考文献としてひく必要があるとき) には,参照可能な文献をさがす必要がある.
分野にもよるが,すなくとも私がかかわっている分野では,さいわい現在ではおおくの参照可能な文献も Web からアクセスすることができる. ウィキペディアからえた知識のウラをおなじ PC のまえにすわったままでえることができるし,それをさがすのに Google などによる検索をつかうことができる.
どうしても Web から情報がえられないときは,図書館にでかけるなり,紙のコピーをとりよせるなどして,紙の文献から情報をえる必要がある. しかし,すくなくとも私のばあいは,それが必要になることは 100 にひとつぐらいですんでいる.
いま日本の大学などでは Web からのコピペ (copy and paste) がおおきな問題になっているが,ウィキペディアについてもおなじ問題があるにすぎない. ウラをとること,それが Web からえた情報をつかうときの基本である.