「ウィキペディアは百科事典ではない!」 と書いた. Wikipedia (ウィキペディア) がはやると百科事典の売り上げがさがると書いた本などもあるが,私にとっては,ふりかえってみても百科事典と Wikipedia のつかいかたはまったくちがっていた.
私は世界大百科事典の検索の仕事をしていたこともあるが,そういうときでも,その仕事をはなれると,百科事典をつかうことはまれだった. いまでもそのハードディスク版,CD-ROM 版,DVD-ROM 版をもっている (さすがに紙の版はもっていないので最新版の紙の世界大百科事典をどこかでみたいと,ずっとおもっているのだが…). しかし,月に 1 回もつかっていない.
いまでは個人の家に百科事典があるということは,よほどそれに興味をもっているのでなければ,かんがえられない. しかし,私が小学校にかよっていたころ,自宅には学研の百科事典があった. Web なんていうものはもちろんなかったし,ほかにもしらべものをするのに適した本などはあまりなかった. そのため,いまとくらべるとよくつかっていたとおもうが,それでもせいぜい週に 1 回くらいだったとおもう.
これらにくらべて,いま,Wikipedia はもしかすると 2 日に 1 回くらいつかっているようにおもう. このちがいはどこからくるのか… いま百科事典をつかわずに Wikipedia をつかうおもな理由はつぎの 2 つだとかんがえられる.
- Wikipedia はあたらしい
- しらべたい内容は百科事典には書いてない,あたらしい内容である. または,書いてあるとしても内容がふるいので,あたらしい内容が書いてある Wikipedia のほうをえらぶ. 百科事典はリファレンスとしてつかえる安定性をもとめているから,ひとつの版とつぎの版とのあいだにはどうしてもある程度の期間をおく必要がある. したがって,これは本質的なちがいだといってよい.
- 外部へのハイパーリンク
- Web など,百科事典や Wikipedia からはずれた資料をあわせてしらべたいが,それができるのは Wikipedia だけである. 電子百科事典のなかには外部へのリンクがたどれるものもあるだろうが,世界大百科事典に関してはそうなっていないので,容易にしらべることができない.
もちろん,百科事典には Wikipedia より (たぶん) 記述が信頼できるという利点がある (Wikipedia のほうがブリタニカよりむしろ正確だったという報告もあるが,疑問な点もあり,また Wikipedia のほうがダメな項目がおおいことはまちがいないとかんがえられる). しかし,信頼性に関しても,Wikipedia でえた知識をそのままうのみにするのでなく,Web でアクセスできる他の資料と照合するだけでも,ずっと信頼できる結果をえることができる.
いまでもプロのなかには紙でしらべることをすすめるひとがおおいし,時間をかけて図書館などでしらべることにはたしかに価値があるだろう. しかし,すくなくともアマチュアであるあいだは Web のほうが便利だとおもえる.