非正規労働者によまれているというので 「蟹工船」 を読んだが,それ以来,非正規労働者の見方になれる政治勢力がいるとすれば,それは日本共産党をおいてほかにはないとおもってきた. きょう (2009 年 1 月 11 日) の朝日新聞には,共産党が実際にそういう方向にうごいているらしいことが報道されている.
「蟹工船」 を読んだあと,不破 哲三 の 「小林多喜二 ― 時代への挑戦」 を読んだ. 非正規労働者の意識とのあいだには相当のギャップがあるとおもわざるをえないが,それでもかつての共産主義の論客が書いたものとしてはかなりソフトな印象だった. 現在の委員長の 志位 和夫 (彼は学科はちがうが私と同期でおなじ応物系だ) はもっと,さきをいっているといえるだろう. 共産党もかわりつつあるということだろう. (写真も朝日新聞から借用)
既存の労働組合をたよりにできない非正規労働者は,団結して自分たちで労働組合をつくり,彼らの雇用者や派遣をうけいれている企業とたたかおうとしている. それは,「蟹工船」 の労働者が団結して彼らの雇用者とたたかおうとしているすがたとかさなる.
不破が書いているように,小林多喜二は共産主義の思想を十分には理解していなかったとしても,共産党員となり共産党とともにたたかおうとしていた. それと同様に,共産党がこれまでめざしてきた方向とはちがうとしても,現代の非正規労働者を政治にむかわせる必要があり,とりあえずそのやくわりをになうことができるのは共産党をおいてほかにはないだろう. 自民党や民主党は多数の蓄財した企業家や団塊世代や正規労働者に支持される政党である以上,非正規雇用者の真の味方にはなりえないだろう [注 1].
日本共産党は 「蟹工船」 の時代には日本に共産主義社会を実現することを目標としていた. しかし,共産主義をささえていた 2 本のはしらである計画経済と共産党独裁のいずれもが,うまくいかないことがわかっている. ソ連をはじめとする共産主義国家が崩壊し,中国が資本主義によって成功した (ただし一党独裁はまだ放棄されていない) 現在,日本共産党がそういう方向にいくことはありえない. 非正規労働者の権利を確保し,彼らとともにたたかうのが,現在の共産党に課せられた使命なのではないだろうか. そしてまた,実際にそういう方向にうごいているようにみえる [注 2].
[注 1] 朝日新聞 の 「派遣切り、限界集落…そこに 「共産党」 ― ルポにっぽん」 (1 月 11 日) にはつぎのように書かれている.
小選挙区制導入後、自民、民主の二大政党制が進んだ。しかし、「働く貧困層」のような新たな課題、地域固有の切実な問題に、政治はこたえきれていない。生活がそれなりに回っている時、不当に扱われて不満があっても、多くの人は抗議の声をあげなかった。だが、がけっぷちに立たされ、声を上げるしかない状況に追い込まれた時の足がかりとして、全国に約2万2千の支部を置く共産党やNPOのドアがノックされている。
[注 2] たとえば,NHK の 「共産 党勢拡大へ雇用政策訴え」 (1 月 3 日) にはつぎのように書かれている.
共産党は、雇用情勢が厳しさを増すなか、次の衆議院選挙に向けて雇用問題をめぐる党の政策や取り組みを訴えるなどして、非正規雇用の労働者や若い人を中心に働きかけを強め、党勢の拡大を図りたいとしています。