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税金がむだづかいされる構造 ― 国家プロジェクトのばあい

これまで,いくつかの国家プロジェクトにかかわってきた. しかし,どうも,国家プロジェクトというものがすきになれない. しばしば税金がむだづかいされているとおもうからだ.

公共事業のむだづかいは糾弾されつづけてきたが,いまだにむだガネがつかわれている. 金額はそれよりちいさいとはいえ,同様のむだづかいはいたるところにあるだろう. むしろ,公共事業のように糾弾されていないがゆえに,もっとむだなカネがつかわれているのではないだろうか. 国家プロジェクトもそのひとつだとおもえる.

企業にとって,自社のカネは慎重につかわなければ経営にかかわる. 赤字企業ともなれば,目の色をかえてムダをなくそうとする. しかし,国からくるカネに関してはそうではない. なんとか余計に予算をとろうとする. とった予算はほんとうに必要かどうかはおかまいなしに,つかう. つかうかどうかわからないものを買ったり借りたり,つくらせたりする. それは,金額こそ公共事業よりすくないだろうが,つかわれない道路をつくる公共事業とおなじである.

私はなんとか,むだをへらすようにしようとこころみた. しかし,私だけのちからではどうにもならなかった. 無理をすればプロジェクトがうまくいかなくなり,かえって成果をへらしてしまう危険もあるだろう.

ケインズは,労働者をやとって貨幣を土にうめ,またそれをほりだすという公共事業について書いている. こういう無意味な公共事業であっても景気対策として効果があるという. 現在でも,わずかでも価値があるものをつくりだす公共事業はやったほうがよいという議論がある (小野 善康 著 「不況のメカニズム ― ケインズ 『一般理論』 から新たな 「不況動学」 へ」). しかし,それによって経済がとりあえず好転するとしても,財政赤字がふえることによって,将来の経済は悪化する可能性がたかい.

したがって,おなじカネをつかうなら,できるだけ効果的に,慎重につかうべきである. そういう感覚をマヒさせてしまう国家プロジェクトは私はやはり,きらいである.

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