「キッチン水栓のデザイン ― オールステンレスとプラスティックつき」 に書いたように,最近はオールステンレスの水栓がおおい. オールステンレスだと耐久性はもうしぶんない. しかし,シャワー水栓のようにつかいかたが比較的複雑なものでも,なにも表示がない,つかいかたを示唆するものがすくないので,ユーザビリティには問題があるのではないだろうか.
温泉施設にあそびにいって,オールステンレス製のシャワーをつかおうとしたが,つかいかたが容易にわからない. プラスティックをつかったものなら,そこにシャワーと蛇口とのきりかえ,水量や温度を示唆する文字や絵などが印刷されていて,とまどうことはほとんどない. しかし,オールステンレスのものは,なにも印刷がない. 印刷してもすぐにはがれてしまうのだろう. 凹凸をつけて文字を書くことはできるが,環境によってはそういう文字はほとんどみえない.
結局,シャワーをあびる時間よりも試行錯誤する時間のほうがながくなって,時間も水もむだになる. これでは,オールステンレスにして耐用年数をながくしてみても,節約にはならない. 本末転倒である.
ためしに大手のサーモスタット混合水栓をしらべてみた. さすがに TOTO や INAX はユーザビリティに配慮していて,部分的にプラスティックなどをつかって,わかりやすくしようとくふうしているようである. しかし,表示がちいさいし,ステンレスを強調するためにモノトーンになっているようであり,あまりユーザビリティがよくなさそうにみえる (実際につかってはいないので,よくわからないが…).
コメント (2)
オールステンレスと書いていますが、水栓の材質はステンレスではありません。
国内の水栓のはほぼ100%が銅合金で製造されていて、それら銅製水栓の外側表面にクロムメッキ(chrome painted)を施しています。
もちろん、TOTO,INAX,SAN-EI,KAKUDAI,その他の国内有名メーカーの水栓は、全て銅で製造されてます。
世界的にも殆どの水栓が銅で製造されていて、ステンレス製の水栓の普及率は1%未満のようです。
そのことはこちらのサイトにも書かれています。→ http://www.fusion-faucet.info/
どうやら現在国内でオールステンレス製の水栓を販売しているのは上記メーカーだけのようです。
また、世界の水栓業界では、水栓の一部にプラスチックを使用していることは、いわゆるコストを削減するための妥協であり、それらはチープな水栓金具の象徴とも考えられています。
プラスチック部分を巨大化して、水量や温度を示唆する文字や絵などを大きく印字することはコスト的にも技術的にも簡単なことですが、メーカーが考えることはいかに最低限のプラスチックと印字でデザイン的にスタイリッシュかつ使いやすくするかということです。
ちなみに金属部分に印字するには通常はレーザー技術を使いますが、それではグレー色しかできませんので、カラーの印字をする為には塗装するかプラスチック樹脂を組み込むことになります。
シャワー水栓の使い方などは、1分も触れば大抵の人が理解できる単純な操作であり、数分触っても分からないほど複雑な操作の水栓を私は見たことがありません。
もし、お年寄りや子供向けのユーザビリティを求めるならそれ用の“巨大レバー”のシャワー水栓がTOTOから発売されていますし、多くのメーカーから取り換え用の巨大レバーが発売されているのでそれらに交換することでユーザビリティは向上します。
以上、私は某水栓メーカーで開発を担当していまして、つい見て見ぬ振りができず書きたくなりました。
管理人様どうか勝手な書き込みをお許しください。
投稿者: 水栓メーカー開発担当 | 2012年01月31日 00:05
日時: 2012-01-31 00:05
水栓メーカー開発担当さま,
どうもありがとうございます.手がすべってオールステンレスと書いてしまいましたが,要は金属製かプラスティック製かのちがいということです.
投稿者: 金田 泰 | 2012年02月18日 15:07
日時: 2012-02-18 15:07