「縦長の印刷から横長の表示へ ― グーテンベルク以来の伝統の改革 ―」 という項目で,ディスプレイが横長なので文書ページも横長にするべきだということを書いた. Kindle も iPad も縦長の画面を採用している. はたしてこれは定着するのだろうか?
かつて Xerox Parc で開発された試作品の Alto (写真) も縦長だった. しかし,製品化された Star などは横長になっていた. パソコンの画面もほとんどが横長だ. 最近ではますます横長な 16 対 9 のサイズがひろまっている. 16 対 9 になったのは高精細テレビの影響がおおきいだろうが,横長になっているひとつの理由は,それが複数のウィンドウをひらくのに適当だからだろう. 本もとじていれば縦長だが,ページをひらくと横長になる. なのに電子書籍は縦長画面でよいのだろうか?
縦長にするべきひとつの理由は,現在の電子書籍のおおきさや解像度ではウィンドウをひとつにしなければ紙にちかい解像度をえることができないということだ. しかし,それは紙にとらわれすぎた発想なのではないだろうか? すくなくとも Kindle のデザインは紙にとらわれすぎているようにおもえる. ここでも Alto の 「失敗」 をくりかえしているようにみえる.
iPad (写真) については,ほんとうに縦長がよいのかどうかは,つかってみなければよくわからない. たぶん Apple のなかではどちらにするか,議論したにちがいない. その結果として現在のデザインになったのだとすれば,それでよいのかもしれない. しかし,やはり Mac をはやらせ iPhone をはやらせた Steve Jobs が iPad のデザインに関しては失敗したのではないかとおもえる. あるいは戦略的に恒久的ではないデザインにしているのかもしれないが…
情報処理学会では従来,研究報告を B5 版縦長の冊子で配布してきた. しかし,2009 年度から冊子配布をやめて横長の PDF 形式で電子図書館に登録している. そうしたのは今後もディスプレイが横長だと予測したからだろう. もし Apple が勝てば情報処理学会はやぶれることになる. はたしてどちらがただしいのだろうか?
もうひとつ,おもいだしたことを書いておこう. 数年前に NHK 技研での研究会で携帯電話に試験的にのせたワンセグの画面をみせてもらった. それは,なんと縦長だった! 携帯電話の縦長画面をそのまま使用し,動画だけでなく文字を表示する領域をとるので,縦長にしたということだった. しかし,いまの携帯電話をみればわかるように,ワンセグを表示するときは横長にしてつかっている.
わたし自身の予想は 「縦長の印刷から横長の表示へ ― グーテンベルク以来の伝統の改革 ―」 に書いたようにグーテンベルク以来の伝統がかわって横長が主流になるということだ.