福島第一原発で水素爆発事故があった日,東京電力と首相官邸とのやりとりのなかで再臨界の可能性が指摘され,東京電力が 1 号機への注水を一時中断する決定をくだしたという. 福島第一原発の所長である吉田氏はいったんはそれに合意し,東京電力本社は最近にいたるまでそれが実行されたとかんがえていたが,実際には吉田所長の判断で注水がつづけられていたという. マスコミや国会で問題にならなければこの件は本社に知らされないままになり,それで問題もおこらなかったかもしれないが,おおきな問題になってしまった. しかし,不適切な本社判断にしたがわなかった勇気,問題があかるみにでたあと注水を停止していなかったことを報告した勇気をたたえたい. そして,東京電力が吉田所長を処分することがないように,のぞみたい.
吉田所長の行動を支持する記事のひとつとして,日本版 Wall Street Journal の 「福島第1原発の吉田所長の注水継続判断」 がある. このなかでは 「ネット市民の間では吉田所長は英雄だ」 と指摘し,吉田所長のリーダーシップをたかく評価している. 私自身は 「震災直前の東京電力による福島第一原発 「プルサーマル」 の広告」 で書いた日経ビジネスの記事くらいでしか知らなかったが,信頼できる人物だという印象をもっていた. 今回の件であらためてそれを確認することができた.
くりかえすが,東京電力が吉田所長を処分することがないように,のぞみたい.
追記: 一方ではつぎのような意見もある.
今回の吉田所長3 件の判断は適切だったが、所長は東電内で「原子力村」と揶揄される原発担当部署のエリート技術者で、原子力村が本社の意向さえ無視できる一大社内勢力であることをはしなくも明らかにした。その原子力村こそが、これまで「安全神話」を喧伝し、原発をアンタッチャブルにしてきた元凶でもある。単純に、気骨のある人と評価するわけにはいかないのではないか。(JCAST テレビウォッチ「海水注入継続を指示 ― 福島原発・吉田昌郎所長「原子力村」エリート」 )