野田首相が TPP 交渉に参加する方向で各国と交渉をはじめることをきめた. この決定を支持したい. しかし,いまおこなわれている TPP の議論は一面的であるようにおもえる. つまり,その議論においては実利ばかりが議論されているようにおもえる. 鳩山首相の時代には民主党は理念をだいじにする党だとおもっていたが,鳩山首相が失敗をかさねるなかで,理念はふきとんでしまったようだ. しかし,TPP をささえるのは 「あたらしい自由貿易のルール,つぎの時代の貿易のやりかたを確立する」 ということにある,つまり理念が重要なのではないだろうか?
いま,貿易のルールは FTA などによって 2 国間で独自のルールがきめられ,ぐちゃぐちゃになろうとしている. 2 国間で勝手にルールがきめられたとき,全体としてできあがる複雑怪奇なシステムがどのようにうごくのか,だれにもわからなくなるだろう. 貿易のルールをもっと単純化しないと,まったく見通せないものになってしまうのではないだろうか. (下記の 「関連項目」 参照.)
TPP がめざしているのは多国間の自由貿易のルールをきめることだ. あたらしいルールをきめて,世界経済のシステムがうまく動作するようにする. 自由貿易のルールだから,関税をゼロにするのが目標になるのは当然だが,それがもっとも重要なことではないだろう. もっとも重要なのは,参加国全体でつかえる,みとおしのよい貿易のルールをきめることだ. 関税をなくすことが最大の目的ではないはずだ.
TPP がめざしているのは貿易だけのルールをきめることではない. 日本がこれまでつみかさねてきた国内産業や食品などの安全に関するルールも影響をうける. それらがダメにされることをおそれて TPP に反対する声もある. しかし,もはや日本が国内にとじてルールをきめられる時代ではないことを認識するべきだ. 中国やインドをはじめとする新興国がちからをつけるとともに,日本の人口が減少していくなかで,国内にとじたルールにこだわっていたら,日本はダメになっていくばかりだろう. もし日本がつくったルールがよいものであるなら,それを海外にもひろめていくべきだ. あるいはそれがひとりよがりのルールであったのならば,あらためるべきだろう. 日本の国益はもちろん重要だが,世界全体をよくすることもかんがえるべきだ. みなおしをおそれるべきではない.
現在,TPP はアメリカ主導になっていて,中国などはべつの道を行こうとしている. 日本はいまや経済においてはアメリカより中国との関係のほうがつよい. だから TPP に参加するべきではないというひともある. しかし,世界共通の自由貿易のルールをみんなで一度につくるのは無理だろう. ブロック単位で協議していくなかで,しだいに世界全体でのルールがみえてくるのではないだろうか. それに,複数のブロックに同時に属していけない理由はない. だから,それを理由にして TPP からのがれるべきではないとおもう.
関連項目: