白熱灯や蛍光灯の場合には定電圧電源 (日本なら AC 100 V) を使用することにより,モジュラリティを確保している. すなわち,定電圧電源の器具は自由に追加したり削除したりすることができる. しかし,LED は DC 3 V 程度の電源で点灯するため,直接 AC 100 V につなぐことは通常はできず,モジュラリティを確保することがむずかしい. かんがえうるひとつの方法は定電流電源をうまくつかうことだ.
従来の方法の延長でかんがえるなら,別項に書いたように LED においても AC 100 V や DC 5 V,DC 12 V という定電圧電源によってモジュラリティを確保する方法がある. しかし,これらの方法は汎用性がとぼしい.
LED の点灯のためには定電流電源が使用されることが多いが,それをつかってある程度のモジュラリティを確保する方法がある. 定電圧電源の場合は器具を並列に配線すればよいが,定電流電源の場合は器具を直列に配線する必要がある. 器具を追加するときはどこかで線を切断して挿入し,器具を削除したあとは線を短絡する (下図). このような断線・短絡のしくみがソケットにそなわっていればよい.
上記のような方法で一応は定電流のモジュラーな電源を実現することができるが,この方法にはいくつか弱点がある.
- 第 1 に,従来の定電流電源が対応可能な電圧の範囲はそれほどひろくない. たとえば電圧範囲が 30〜90 V であれば,接続可能な LED の個数は (3 V のもののとき) 10〜30 個にかぎられる. よりひろい範囲の電圧に対応できる定電流電源をつくればよいが,そういう電源のコストはたかくなるだろう.
- 第 2 に,電流がことなる LED をひとつの定電流電源につなぐことはできない. 1 個の LED 素子は電流が 20 mA くらいであることが多いが,もっと大電流をながすことができるものもある. 20 mA に固定されてしまうと,大電流素子の特性はいかされないことになる. ただし,これは白熱電球を電源規格である 100 V にあわせて設計するのと同様に電流を 20 mA にあわせて LED 素子を設計すればよいともいえる. LED の電圧が物理特性によってきまってしまうのとはちがって,電流は設計によってかえられるから,それほど困難なことではないとかんがえられる.
- 第 3 に,多数の素子を直列につなぐと電圧がたかくなるため,感電したときの危険がおおきくなる. これに対する対策は漏電をふせぐことくらいしかないだろう.
これらの弱点をかんがえると,定電流電源によってモジュラリティを実現する方法は,すくなくとも当面はあまり便利とはいえない. やはり定電圧電源をつかいわけていくほうがよいようにかんがえられる.