神獣・狛犬などの絵や大英博物館所蔵となった有田焼の作品でいま世界で注目されつつある 30 代の画家・作家の自伝だ. 私はたまたまみたテレビ番組でひきつけられ,日本橋三越の個展をみて,さらにこの本を読んだ.
こどものころから「普通の女の子」にない感受性をもっていて「見えない世界を描きたい」と画家をめざしていたことがつづられている. 祖父の死,ウサギの死の際に魂がぬけていくのを見たと書き,その色まで書いている. そして,個展でわからなかった「大和力」,「死生観」といったことばが説明されている.
しばしばライブペイントをおこなっていて,白装束を着,祈ってからはじめるが,「実際に自分が人前で見せながら描くとなると,想像以上に興奮した」と書いている. その様子はことばのかわりに絵で神をつたえる巫女だ.
伊勢神宮や出雲大社などだけでなく,世界をまわって仏教,ユダヤ教などにふれた話とともに,ニューヨークのギャラリーで絵をみせてまわって相手にされずにくやしいおもいをした話も書いている. そういう経験から,チームプレーで世界をめざす (そのために自分の美貌も活かす) 戦略まで書かれていて,現代アートの作家が成功するためにはそれが必要なのだろうと感じさせる.
評価: ★★★★★
関連リンク: 世界のなかで自分の役割を見つけること.
追記: 本として出版するには編集者の苦労があったのではないかとおもえる. ある程度のまとまりをつける必要があっただろうが,あまりきれいに編集してしまうと「神」がみえなくなるだろう. ほどよい編集でおさめられているようにおもう.